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感想「コンビニ人間」

「コンビニ人間」 村田沙耶香 文春文庫
近頃、この著者の文章や発言を見る機会が度々あって、興味を感じたので、代表作らしいのを読んでみた。

コンビニで、定型化した手順で働くことによってしか、社会への適応を実感できない女性を描いた小説。主人公は、日本の社会を構成する大多数の人間が、特に意識せずに共有している行動様式が身体に入っていないので、周囲からその様式にのっとるように求められても、戸惑いしか感じられない。だから、定められた手順に従っていれば、自分の異質性を表に出さずにすむ、コンビニ店員としての生活に、喜びを見出している。
基本的には、異質性を抱えた人間の、同調圧力を受けることによる生き辛さを描いた小説のように見える。主人公や、半ばから登場する男性キャラ(白羽)は、社会に自然に適応出来ないことを自覚して、無難に生きていく方法を模索している。ただし、あまりうまくは行っていないし、著者はそれを同情的にではなく、むしろ批評的に突き放して描くことで(特に白羽には辛辣)、事態の深刻さをはっきり感じさせる。敵は社会の構造なので、通り一遍の同情やかわしかたでどうにかなるようなもんではない、と言っているかのよう。

周囲の行動様式を理解できない(もしくは納得できない)というのは、自分にもある傾向だし、この小説に描かれている同調圧力をかわすやり方には、思い当たる節もあったりするから、面白いというより、刺さってくる小説だった。
それにしても、同調圧力を掛けてくる側の人々も、どこまで本当に行動様式に染まっているんだろうと思うことがある。無難に生きていくために、うわべを取り繕っているだけ(そして、それがうまくやれてはいる)という人たちが、ある程度は確実に存在しているのだろうけど、それはどれくらいの割合なんだろうか。そういう人たちが同調圧力から放たれたら、この社会はもうちょっとは生きやすくなるんじゃないだろうか、と思ったりする。

なお、この作品は2016年初出で、芥川賞を受賞している。

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