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感想「脱落者」

「脱落者」 ジム・トンプスン 文遊社
不幸な成行で、自分の知的な能力に見合った人生を送れず、得られると思った財産も得られず、田舎町で鬱屈している保安官補が主人公。トンプスンの小説ではお馴染みの、明暗の二面性を抱えた人物で、暗い面が露出したことをきっかけに人が死んだことで、彼や周囲の人間の人生が狂い始める。
もっとも実際には、主人公の人生は既に狂っているので、巻き込まれた人間たちの人生が狂っていく話と言った方がいいのかもしれない。
そして、不条理感や絶望感が漂う、真っ暗な(ノワールなと言ってもいいのかな)世界へ話は進んでいくが、終盤になると、意外に普通のサスペンス・ミステリっぽい展開になり、その流れのまま、あっさりと終わる。元々、伏線は張られていたので、予定通りの展開だったのかもしれないが、ちょっと意外な転調をした印象。
ただ、その結末で大きな役割を果たす人物は、主人公以上に病んでいるように思えるので、表向きはどうあれ、彼らが向かう未来が明るいものとは考えにくいし、そのあたりにトンプスンの小説らしい闇が覗いているような気はする。
まあ、どこまでがトンプスンの計算なのかは分からないけれど。彼は実際には、結構行き当たりばったりに書き飛ばして、そんなに丁寧に話を作ってはいない気がするので。その辺を、野崎六助が解説で、割と身も蓋もない書き方をしているのが、(やたらと著者を持ち上げる書き方をしていることが多い)トンプスンの小説の解説としては珍しくて面白かった。

実は、この解説には、自分がなんでトンプスンの小説を読み続けているのか、というのを改めて考えさせられた。すごく面白いというわけでもなく、ノワール的な小説にそんなに関心があるわけでもないのに、なんで?、というのを、元々、時々思っている。一人の作家なり、シリーズなりを追いかけて、どういう風に振れていくか、あるいは変わっていくか、というのを見る面白さ、だと思うのだけど、要は惰性?、という気もしないではない。でも、小説にしろ、スポーツにしろ、自分が見続けているものって、基本的にみんなそういうものかもしれない、とも思う。
(2019.5.19)

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