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感想「地面師」

「地面師」 梶山季之 光文社文庫
光文社文庫の企画、「昭和ミステリールネサンス」の2冊目。2018年刊行。
梶山季之が流行作家だった時期は、自分が小説を読み始める以前だったし、今はこの著者の本は本屋でほとんど見掛けないから、なぜそんなに読まれていたのかと思っていたが、本書を読んでいて、なんとなく感覚はつかめたような気がする。
本書に収められている作品群は、1960年前後に発表されたもので、企業の戦略を背景に、それに振り回される社員の悲哀を描いたものが多い。しかも、プロットに関わってくる企業の技術や戦略などは、丁寧に描かれている上にリアリティがあり、小説としてだけでなく、情報源としての関心も持てる内容だっただろうと思う。そうであれば、いかにも高度成長期のサラリーマンに受けそう。観光小説的な作品も収録されているが、これもなかなか情報が手厚い。
その上、プロットに工夫があり、小説としての面白さも、しっかり確保されていると感じた。
全体的に時代が色濃く反映されているので、情報や風俗が古びてしまうと、読み継がれるのはなかなか難しかったんだろうと思うが、小説を書く技術やテーマの取り方が、とても達者な作家だったということはよくわかった。

それはそうと、少し話は違うが、子供の頃、家にあった新聞や週刊誌でこういうタイプの小説(梶山季之もあったのかもしれない)を読んで、会社というのはこんなひどい所で、就職するとこんなひどい思いをしなきゃいけないなら、就職なんてしたくないな、と思っていたのを思い出した。後年、実際に就職してみて、一般論としてそう言ってしまうのは極端にしても(もちろんばらつきはあるわけだから)、ある程度は真実だったと思った。梶山季之は、日本の社会の醜悪な一面を描いていた作家だったんだろうと思う。本人にどこまで自覚して書いていたのかはわからないけれど、本書の解説を読むと、そういう意識は確かにあったように感じられる。 
(2020.1.17)

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