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感想「八月は残酷な月」

「八月は残酷な月」 河野典生 光文社文庫
「昭和ミステリールネサンス」の4冊目。2019年の刊行。本書も1960年前後の短篇を収録。
この作家は、初期の国産ハードボイルドの名作として有名な 「殺意という名の家畜」を、大昔に読んだことがある。それなりに感銘を受けた覚えはあるが、続かなかったのは、似たような系統の作品があまりなかったからじゃなかったかな。
著者はミステリに、あまりこだわっていなかったと聞いた覚えがある。もっと多様な小説を書いていた作家。本書はあくまでもミステリの短編集だから、収録作品群はミステリの範囲内だけれど、大半はハードボイルドというより、スタイリッシュな犯罪小説かなと思う(解説を見ると、著者の言い方では、「悪漢小説(ピカレスク)」らしい)。そして、主人公を犯罪を犯さざるを得ない極限状況に追い込むために、強引に設定を作っているように感じる作品が多い。
なぜそうなるかといえば、格好のいい劇的な場面を描くことに力点があって、ストーリー展開の自然さは、あまり意識していないから、と感じる。自分はスタイリッシュな小説が好きと思っているが、本書の作品群のそうしたストーリーの不自然さには、違和感が強かった。ただ、個々の場面が鮮やかで魅力的なのは間違いない。
巻末の「海鳴り」は、ミステリのジャンルのぎりぎりに近い所で、独特なイメージを描いていて、著者の方向性を示しているように思った(ただし、この短篇自体は、あまり好きではないが)。

(2020.1.31)

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