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感想「パラドックス・メン」

「パラドックス・メン」 チャールズ・L・ハーネス 竹書房文庫
昨年邦訳された、1955年原著刊行の長篇SF。「ワイドスクリーン・バロック」の始まりとなった作品とのこと。格差社会が奴隷制まで行きついた22世紀のアメリカでの、支配階級と反対勢力を背景に、超人的な力を持つ、過去の記憶を失った主人公の戦いを描く。
スケールが大きい話の中に、SF的なアイディアを片端からぶち込んで、描写もきらびやかで華々しく、なるほど「ワイドスクリーン・バロック」だなと思う(よくわかってないが)。
先行して読んだ同じ作家の「ウルフヘッド」が、これよりも刊行時期がだいぶ新しい割に、内容は古めかしく感じられたので、どうかなと思ったのだけれど、むしろこちらの方が新しい感じのある作品だった。「ネット」に関わる描写とか、刊行時期の割に新しすぎるように見える部分もあって、不思議にも思ったが、解説を読むと、1980年代にかなり大幅な改訂が行われていて、そちらの方が本書の底本だそうなので、その辺が理由なんだろうと納得はした。
個人的には、アイディアが炸裂している所に、これこそSFという印象は持つものの、話そのものは、アイディアの華々しさに負けて、どこを目指しているのか、何を書きたいのかが、よくわからなくなっているように思える。ちゃんとプロットはあって、伏線回収もしっかり行われているのだけど、そう思ってしまうのは、まさにそのSF的なアイディアが具体化している、話の構造のせいもありそう(具体的に書くとネタバレになる…)。
小説らしさみたいなものはあまり意識せず、アイディアの面白さに着目した方が、本書は楽しめそうな気がするが、自分の趣味には、ちょっと合わなかった感じ。バリントン・ベイリーあたりが、かなり似た作風に思えるし、そちらは結構好きな作家なのだけど、本書がもうひとつだったのは、ベイリーほど、バカバカしさに徹しきった感じがなかったからかな、と思った。
(2020.3.26)

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