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「新聞記者」

去年公開された映画。公開当時に観に行こうかと思っていたが、タイミングが合わず、行きそびれていた。そもそも、今の政府を批判する内容の映画ということで、宣伝がろくにされず、上映館数も少なかった。しかし、そういう悪条件をはねのけて、かなりのヒットを記録した上に、日本アカデミー賞の主要な賞をいくつも取って、当初の上映時よりも多いという館数での凱旋上映が始まった。そういうわけで観に行った。

とはいうものの、テーマが重くて、だいぶシンドイ映画なんじゃないんだろうか、という懸念を持っていたけれど、意外にも、エンターテインメントとしての完成度の高いサスペンス映画だった。もちろんテーマは明確で、重い内容ではある。今の政府がやってきた、ろくでもないこと(森友・加計事件、詩織さん事件など)をモデルにした事件を描いていくことで、明確な政府批判の映画になっている。とはいえ、のんびり見ていられる映画ではなかったのは、テーマ性によるものというよりは、サスペンス映画としての完成度が高く、緊張感の高い映画だったからじゃないか、という気がする。
もちろん、「社会派」のサスペンス映画だから、テーマ性は完全には切り離せない部分ではあるけれど。切り離すことは、映画の製作サイドも望んではいないだろうし。
ちなみに、ドキュメンタリーではなく、あくまでもフィクション。そういう意味で、逃げ道はあるわけだし、これくらいの権力批判・社会批判の映像作品は、以前はそれほど特別なものではなかったと思うんだが(ちゃんと確認したわけではないので、あくまでも印象だが)、にもかかわらず、公開時に宣伝されなかったとか、俳優の出演交渉が結構大変だったとか(一方の主役の新聞記者を演じたのが韓国の女優さんなのも、その影響だったらしい。もっとも、怪我の功名というか、この起用によって、この映画はむしろ良くなっているように思える)いう話を聞いたのを思い出すと、今、この国は本当にあぶなくなっているのでは、と思えてくる。

主演男優賞を取った、内閣調査室勤務の官僚を演じた松坂桃李が、非常によい演技を見せていて、「シンケンジャー」から随分遠くまで来たなあ、と思って、しみじみした。韓国の女優さん(シム・ウンギョン)も主演女優賞を取っているが、日本語がそれほど達者ではないところを逆手に取った話作りで、日本の中だけで閉じない、作品のスケール感を出していた。これは監督の力だろう。
上げるところは上げていたが、全体として必要以上に劇的になりすぎない演出も、良かったと思う。ちなみに、監督賞は逃したが、作品賞は取っている。過去の受賞作品を見ると、この賞にどれだけ重みがあるんだか、と思わないでもなかったりするけれど、選ばれたこと自体が、この映画にとって、よいことだったのは間違いない。
おかげで自分も、凱旋上映で観に行けたわけだし。
(2020.3.15)

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