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感想「タコの心身問題」

「タコの心身問題」 ピーター・ゴドフリー・スミス みすず書房
タコには、人間とは違う進化をした心や知性があるのでは?、という本。副題は「頭足類から考える意識の起源」。原著は2016年に刊行され、邦訳は2018年。
ポイントはタコ(やイカなど)を含む頭足類は、進化の非常に早い段階で、人間を含む脊椎動物と分かれたという所。脊椎動物が心や知性を獲得する前の段階で分離しているので、頭足類がそうした能力を持っているなら、それは脊椎動物とは別のプロセスで獲得したことになり、異なる種類の知性ということになる。ある意味、地球外の知的生命体に近いイメージ。
冒頭の部分に書かれていた、その辺の引きの強さにひかれて、読んでみることにした。

中の方まで読んでみると、心・知性といっても、それほど高度なもののことを言っているわけではなく、せいぜい犬や猫のようなレベルの話なので、地球外の知的生命体というイメージからは、かなり離れてはいる。そうは言っても、違うプロセスで獲得され、脊椎動物とはかなり異なっている(と思われる)知性と、人間が(単純なものとはいえ)コミュニケーションを取れるというのは、ずいぶんロマンのある話なのは間違いない。
タコやイカの生活や行動様式、知性の獲得も含めた地球上の生物が進化してきたプロセスなどが、丁寧に説明されている。専門的な所にもだいぶ踏み込んでいるので、難しい部分もあったが、おおむね興味深く読むことが出来た。それにしても、タコやイカに、(心や知性は別としても)こんなに高度な能力があったとは知らなかった。

しかし、タコやイカにすらそんな力があると知ると、そうした生き物を殺して食っていることを、改めて考えないわけにはいかないと思った。自分はベジタリアンじゃないし(実際のところ、植物にもある種の知性があるんでは、という説もあるから、ベジタリアンならいいのか?、という疑念も少しある。なお、植物の知性については、本書でも軽く触れていた)、自分が生きていく必要から考えても、肉食をやめようとも思っていない。それが食物連鎖というものだろうし。でも、生き物を殺して食うことで、自分が生きてるという意識を持ち続けることは、やっぱり必要なんじゃないかとは考える。

そして本書の締めくくりは、脊椎動物や頭足類の知性を育んだ海が、人間による環境破壊で、取り返しのつかない状態に変質してしまうことへの危惧。具体的な原因としては、汚染物質などの流入と並んで、海洋生物の乱獲もあるわけだから、そういう意味でも、生き物を殺して食っているということの意識は必要だろうと思う。
(2020.5.14)

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