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感想「ことばは国家を超える」

「ことばは国家を超える」 田中克彦 ちくま新書
この人は昔からファンなので、著書を見かけると、たいてい買ってしまう。モンゴル語がメインの言語学者だけれど、それ以外の言語についても詳しいし、言語に限定した領域にとどまらず、民族問題や社会問題などについても自在に切り込んでくる。知識の広さと、理路整然とした語り口が、読んでいて楽しいし、いろいろと考えさせられもする。

本書では、主にウラル・アルタイ語について論じている。ウラル・アルタイ語族というのは、おおむねユーラシア大陸の北側に広がる、印欧語族に含まれない言語をひっくるめたような概念で、今ではあまり信憑性がない的な扱われ方をしている、という印象があった。本書で著者は、ウラル・アルタイ語族について丁寧に説明するとともに、あまり正統的ではないものとして扱われている経緯についても細かく述べている。述べられている言葉や定義はおおざっぱには知っていたけれど、なるほどそういうことだったのかと、認識を深めた。もっとも、ウラル・アルタイ語族の是非について、これで判断しようとは思わない。そもそも自分は言語学に興味はあるけれど、あくまでも興味本位の素人なので、そこまで踏み込むつもりもない。そういう概念があって、それに対してこういう議論が戦わされているというところを、読んで楽しんだのと、いろいろな細々とした知識に触れて、感心しただけ。また、ウラル・アルタイ語族という概念が、方々で民族の問題と絡んでくるところを、興味深く読んだ。
著者の書き方も、特定の学説を主張するというよりは、ウラル・アルタイ語を軸にして、時々脱線しながら、思いつくままに文章を綴っているという感じなので、そんな読み方でいいんじゃないかなとも思う。一方で、とりとめない書き方をしていながら、時々、思いのたけを感じさせる強い表現が表れたりする。そういう部分にも、読んでいて感銘を受ける。

いろんなところに話が及ぶのは、広くて深い勉強・研究がバックボーンにあればこそで、うらやましくも感じる。学生の頃に、こういう世界に触れていたら、研究者を志したかもしれないな、と思ったりする。もっとも、研究者でも、こういう境地にたどり着ける人が、そうそういるわけではないだろうな。
(2021.12.26)

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