« 「テン・ゴーカイジャー」 | トップページ | 感想「町かどの穴」 »

感想「ボニーとアボリジニの伝説」

「ボニーとアボリジニの伝説」 アーサー・アップフィールド 論創社
オーストラリアを舞台にした、アボリジニと白人の混血の警官・ナポレオン・ボナパルト(ボニー)を主人公にしたシリーズで、久々(38年ぶりとのこと)の邦訳刊行。この時にハヤカワミステリ文庫から3作出たのを、10年くらい後に読んで、印象的だったのを覚えていたので、読んでみた。原著の刊行は1962年。なお、シリーズ第1作の刊行は1929年と、かなり古い。

オーストラリアの砂漠の中で、ミステリ的に魅力的な、非常に謎めいた状況で死体が発見され、その謎を解明するために主人公が派遣されてくる体裁。ただ、謎の解明そのものは、それほど魅力的なものではなくて、そういう部分に期待して読むと、多分肩透かしになる。
興味深いのは、特異な風景や、アボリジニと白人の関係といった、オーストラリア独特の特殊な要素の描写。他の作品もそうだったかどうかは、読んでからかなり日が経っているので、もう覚えていないが。
ちなみに事件の真相は、そういう特殊性と密接に結び付いているので、そちらの観点から見た方が、話の構造や仕掛けがはっきり見えて、興味深く読めるように思った。

アボリジニと白人の関係性については、読んでいて、いろいろ考えさせられる。オーストラリアでは、最近にも首相が、白人側からアボリジニに対して、過去の歴史について謝罪したというニュースが流れていたはずで、今も生々しさのあるテーマと思われる。
本書が書かれたのは60年も前(シリーズの開始に至っては、さらに約30年遡る)だから、この問題についての作者の認識は、現代の状況とは相当乖離があるだろうと思う。でも、テーマについて観念的に考える材料としては古びていないように思えるし、おそらく著者の意識が反映されている作中のボニーの言動も、フェアなものを感じる。こうしたテーマに関しては当事者ではない、日本在住者だから、気楽に言えることかもしれないが。
まあ、考えようによっては、19世紀以降に欧化した日本人は、どっちかといえば、アボリジニの側の立場といえなくもないのかも、みたいなことも思った。

他には、当時のオーストラリアのアジアへの目線(というか、警戒心)が見えるのが興味深かった。元々は黄禍小説を書いていたという著者の一面を感じさせるし、当時のオーストラリアにはそういう感覚があったのか、という発見でもあった。多分、白豪主義ともつながっているんだろう。こういう感覚は今も、薄れてはいるかもしれないが、消えてはいないんだろうね。
(2021.12.4)

|

« 「テン・ゴーカイジャー」 | トップページ | 感想「町かどの穴」 »

小説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 「テン・ゴーカイジャー」 | トップページ | 感想「町かどの穴」 »