感想「ユーモア・スケッチ傑作展1」
「ユーモア・スケッチ傑作展1」 浅倉久志編・訳 国書刊行会
昨年末に出た本。1970年代から1990年代の初めまで、浅倉久志が「ハヤカワミステリマガジン」に連載して、単行本化もされたものの復活。今回は、以前の単行本化から漏れた作品も加えた増補版で、全4巻刊行予定とのこと。主にアメリカの、ユーモラスな短篇小説・エッセイ的なものを、「ユーモア・スケッチ」と総称して集めたアンソロジー。
単行本を買って読んではいないけれど、「ミステリマガジン」の連載は愛読していた。その影響で、ジェイムズ・サーバーとか、ロバート・ベンチリーとか、H・アレン・スミスとか、いろいろ探して読んだし、この連載を読んでいなかったら、アメリカのユーモア小説をここまで好きにはならなかたと思う。
今回、久々に読み返して、楽しかった。さすがに古いか、と感じるものも、ある程度あったけれど、「ミステリマガジン」の連載自体が、既に30年以上前だと思えば、仕方ない。作品そのものは、古いものだと、書かれて100年以上経っていることになるわけだし。ただ、古いとは思っても、懐かしさはあるし、浅倉久志の翻訳は名人芸の域だし、読んでいて楽しい。
それに、純粋に面白い作品もたくさんある。本書にも登場しているジェローム・K・ジェロームが書いた、「ボートの三人男」は19世紀のユーモア小説だけれど、読んで爆笑出来たりするから、それくらいの年月では廃れない、普遍性の高いユーモアというのもあるんだよなと思う。古典落語なんかもそうだな。
本書に選ばれている作家の中では、スティーヴン・リーコックが、ユーモア作家として、ちょっと別格じゃないかという気がしている。これは昔からそう思っていた。ナンセンスの感覚が、その他の作家に比べても、飛びぬけている気がする。
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