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感想「ロールスロイスに銀の銃」

「ロールスロイスに銀の銃」 チェスター・ハイムズ 角川文庫
1965年の小説で、角川文庫での邦訳刊行は1971年。古書店で買って読んだのは、多分、1990年頃じゃないかと思う。それ以来の再読。
ニューヨークのハーレムが舞台の、「墓掘り」ジョーンズと「棺桶」エドという黒人刑事2人組を主人公にしたシリーズの一作。このシリーズは、邦訳をぽつぽつ買い集めて、その都度読んでいたのだけど、全体を通して読んだことがなかったので、一度通しで再読してみたいという気持ちを、以前から持っていた。
2019年の4月に洋画専門チャンネルのザ・シネマで、本書が映画化されたものが放送されるのを見つけて観て、そこで改めて再読する気になったが、なんとなく手が付かないうちにだいぶ日が経ってしまっていた。ようやく読んだ。

ハーレムで「アフリカに帰ろう」というキャンペーンをしている(偽)牧師の集会で、集まった8万ドルの募金が強奪される話。墓掘りと棺桶が事件の調査に当たる一方で、消えた金の争奪戦が繰り広げられる。

映画の感想は、これに続いて、(見た当時、書いていなかったので)別途書いておくことにするが、小説は映画に比べると重い感じがする。コメディ的な面もあるのだけど、そういう部分も、黒人が置かれている現実を踏まえた上で描かれていることで、ブラックユーモア的な雰囲気が付きまとっている。描かれる事件そのものも、かなり暴力的で血なまぐさい。そういうふうに、どぎつい場面やディテールが描き込まれることで、他のミステリで描かれるニューヨークとは異質な空気感が感じられるようになっている。それが、この小説(シリーズ)の最大の特徴だと思う。
ただ、黒人差別の問題や、そのことに対する怒りなどは、小説の中のあちこちに表れてくるし、重要なテーマではあるのだろうけれど、それらは、こういう舞台でこういう小説を書けば、自然に浮かび上がる要素なのではないかという気がする(それくらい本質的な要素だとは、言えるかもしれないが)。基本的にはこの小説は 、社会派小説というよりは娯楽小説だろうと思う。だから、日本で翻訳でこの小説を読む分には、他の小説と違う独特な雰囲気の中で描かれる、派手なアクションシーンや、コミカルなやりとりを、素直に面白がって読んでいればいいんじゃないか、とも思う。背景に黒人問題が背景にあることを忘れさえしなければ。忘れられないだろうとは思うけれど。

なお、ひとつうっかりしていたことがあった。本書は、この邦訳が刊行された時点でのシリーズの最新作だが(映画公開に合わせたものと思う)、なんとなく、シリーズ第1作と勘違いしていて、そういう意識で読んでいた。その影響で、内容の受け取り方に、多少の誤解があったかもしれない。まあ、この先、シリーズの他の作品も再読していくつもりなので、その辺は追々ということで。

[追記(3/27)] 本書がシリーズの「最新作」というのは、ハヤカワポケミスの「狂った殺し」の巻末にある、小鷹信光による詳細なシリーズ解説がを見ると、少し違うらしい。フランス版とアメリカ版があり、その間で異同があったりするので、ちょっとややこしい。ただ、いずれにしても第1作ではないので、自分の受け取り方にとっては、それほど大きな違いではなさそう。

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