感想「正岡子規ベースボール文集」
「正岡子規ベースボール文集」 復本一郎・編 岩波文庫
本屋で見掛けて、ごく薄い本で、安かったこともあり、手が出た。
野球好きだったことで知られる正岡子規が残した文章から、野球について書かれたものを抜粋してまとめたもの。そんなに膨大な量があるわけでもないけれど、本当に野球が好きだったんだなあ、という気配が伝わってくる。
今年は野球が日本に伝えられて150年ということで、記念したイベントなども行われていたらしい。不覚にも、今年も終りが近いこの時期まで、全然知らずにいた。今年出た本書の帯には「野球伝来150年」というマークが付されていて、特に注記はないけれど、連動企画ぽいように見える。
正岡子規が野球に関わっていたのは、まさにその150年前だから、現代の野球好きとは、少しニュアンスは違うはず。メジャーなスポーツとしてではなく、アメリカから伝わって日の浅い競技の愛好者ということになるから、一種の物好きとも言えるかもしれない。ただ、書かれている内容を読んでいると、今の野球好きと、気持ちの在り方に大きな違いはないように感じる。むしろ、プロが存在していたり、野球に関連した情報があふれているわけでもなく、あくまでも個人の趣味のレベルと考えれば、より素直な愛情のようにも思える。
子規が野球のルールについてざっと説明している文章があって、明治の言葉で説明するとこうなるんだな、というのが、面白い。ひとつ、今と大きく違うので気付いたのは、ショートの守備位置がピッチャーとサードの間と書かれている(セカンドは二塁ベースのそばで守るらしい)。二三塁間に打球が飛ぶことが多いので、そこに守備の選手が入るという説明になっている。右打者が引っ張って打てば、確かにそっちに飛ぶものね。この説明がどこまで正しいのかは知らないけれど、ショートというポジションの発祥について、なるほど、そういうことだったのかな、と思わせてはくれた。
野球以外のスポーツと比較して、複雑で変化が多いので、観客にとっても楽しいと書いている部分がある。比較対象が陸上競技とか競馬とかに限られていて、野球以外の球技との比較は、テニス以外はないのだけど(まだ伝わっていなかったのかも?)、とりあえず野球のそういう面白さに関しては、自分も異論はない。
正岡子規を、同好の士?として身近に感じられる本だった。
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