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感想「七つの裏切り」

ポール・ケイン 扶桑社ミステリー
アメリカでは1946年が初出の短篇集が、昨年の年末に邦訳されたもの。近頃、木村二郎が昔の小説の邦訳を、続けて出している気配があるけれど、何か背景があるのかな。
解説で書かれている、ポール・ケインが、最もハードボイルドと言われていた作家、という話は、小高信光あたりが書いていたのを、以前読んだ覚えがある。長篇「裏切りの街」が1989年に河出文庫から出たのは、多分、その頃だったはず。読んでみて、そこまで面白いとは思わなかったような気もするけれど、本書を書店で見つけて、懐かしさもあって、買ってみた。
「最もハードボイルド」だけあって、人物の内面をほとんど描かず、外見や行動だけを描写していくスタイルで、そっけない文章。それはそれでスタイリッシュで格好よくは見える。ただ、そういう描き方だと、あまりややこしいプロットは、分かりにくくなるので向かないのでは、と感じるのだけど、どうも話がやたらと複雑になる傾向がある。昔、確かジョン・L・ブリーンあたりが書いたハードボイルドをおちょくったパロディ小説で、格好つけた主人公が複雑で支離滅裂な解決を口頭で延々と説明し続ける、というのを読んだ覚えがあるけれど、まさにそんな感じがある。
もっとも、1946年以前の作品群なので、当然、時代背景も古いし、そもそもが現代の小説とは違う、クラシックなスタイルで書かれたミステリだという前提で読む分には、これはこれでそれほど違和感はないような気もする。格好のよさはあるし、ストーリーにも、結構洒落たひねりが効いていたりもするので、面白く読むことは出来た。
ちょっと硬すぎる訳文は気になった

(2023.3.18)

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