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WEリーグ第6節 浦和対長野

2023.12.24(日) 14時 浦和駒場スタジアム
観客 2235人 主審 山下良美 副審 坊薗真琴、高橋早織

 三菱重工浦和レッズレディース 3(1-1)1 AC長野パルセイロ・レディース
             (2-0)

 得点 7分 浦和・猶本
    21分 長野・宮本
    73分 浦和・猶本
    82分 浦和・清家

頭から浦和が主導権を握った試合展開に見えていて、まあそうだろうな、と思っていた。
7分に浦和の猶本に詰められた長野のDFが、GK梅村へバックパス。そこへ猶本がさらに詰めていき、梅村からボールを奪ってシュート。あっさり浦和が先制して、あまり面白くない試合になりそうだな、と思った。
しかし、押されていた長野が、20分に得たFKを菊池が蹴って枠内へ飛ばす。浦和GK池田がクリアしてCKになったが、これを福田が蹴って、中央で宮本が合わせて同点。
とはいえ、その後も浦和が優位に試合を進め、34分には右サイドから切れ込もうとした清家が、DFに倒されてPKを得た。しかし清家のPKは梅村に止められてしまう。浦和が優勢に試合を進めたものの、追加点はないまま前半終了。長野が次第に、浦和のやり方に慣れて来たようにも感じられた。
後半も前半終盤の試合の流れを引継いでいたと思う。ハーフタイムに長野は攻撃的な選手を入れ替えて、攻勢に出た感じもあった。
58分には交代出場した長野の小澤が、クロスバーに当てるミドルシュート。惜しかった。
その後は、やはり浦和が試合を支配したものの、なかなか得点まで行けなかった。長野GKの梅村がよく守っていた印象がある。しかし73分に塩越のCKから猶本が決めて、浦和が勝ち越し。87分には清家がクロスを頭で合わせてダメ押し。

地力で勝る浦和の順当勝ちだったと思うけれど、長野が勝ち越していればどうだったかな、という気もする。浦和がややもたつき気味だったのは、直前の週半ばにもビジターで試合があって連戦だったので、疲労が残っていたのかな。でもまあ、やっぱり浦和は強い、という感じ。選手が揃ってるのは間違いない。

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浦和のゴール裏。
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長野のゴール裏。
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WEリーグ第6節 大宮対新潟

2023.12.23(土) 14時 NACK5スタジアム大宮
観客 2014人 主審 杉野杏紗 副審 萩尾麻衣子、吉田瑞希

 大宮アルディージャVENTUS 1(0-2)2 アルビレックス新潟レディース
                  (1-0)

 得点 16分 新潟・石淵
    24分 新潟・滝川
    79分 大宮・長嶋

スタジアムに入るとスコアボードが真っ暗で、故障?と思ったら、スコアボードの改修で3月まで映像が表示できないらしい(アナログ時計は生きていた)。この日のWEリーグだけでなく、2月下旬開幕で、その間にホームゲームもあるはずのJリーグも、映像表示なしでの開催ということになる。ただでさえ来季はJ3に降格してのスタートなのに、いよいようら寂しくなりそう。

今季初のWEリーグ観戦ながら、前週に皇后杯でエルフェン対大宮を見ていたので、あまりそういう気がしなかった。
大宮のメンバーは前週から多少入替があり、前週はDFの坂井をFW起用していたのだけど、この日は本職の井上。前週、前半はチーム全体でもほとんどシュートも打てない状態だったことを思えば、変更してくるのも不思議はないという感じ。
とはいうものの、この試合も大宮は低調な前半。新潟の攻勢に押し込まれて、相手ゴールの近くまで攻め込むこともほとんど出来ていなかった。
16分の新潟が、右サイドから川澄が入れたクロスを中央で石淵が合わせるきれいなゴールで先制。さらに24分にも、人数を掛けた分厚い攻めで白沢がシュートを打ち、大宮GK望月が跳ね返したものの、こぼれ球を滝川が押し込んで2点目。
大宮は37分に、ゴール前に入り込んだ杉澤がパスを受けて、決定的なシュートを打ったが、相手GK平尾に好セーブされた。前半の大宮の好機は、これくらいしかなかった気がする。
後半も新潟優位の流れは変わらず、滝川が惜しいシュートを放ったり、押し気味に試合を進めていたが、追加点は決まらず。逆に大宮が79分に、CKから混戦になった所を長嶋が押し込んで1点差とした。しかしその後は、得点が動くことはなく、新潟が2-1で勝ち切った。

大宮は前週の試合を考えても、どうもうまく攻撃の形が作れていない印象。ここまでの成績を見る限り、そこまで点が取れてないようでもないし、そんなにチームの成績が悪いわけでもないのだけど、どういうことなのかな。
新潟が選手が噛み合って、いい攻撃が出来ているように見えたのは確かで、好調なチームと当たって、勢いに敗けたというところなのかどうか。

点灯しないスコアボード。
20231223board 20231223pitch 20231223score大宮のゴール裏。
20231223ohmiya新潟のゴール裏。
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皇后杯5回戦 ちふれASエルフェン対大宮

2023.12.17(日) 13時 熊谷スポーツ文化公園陸上競技場
観客 2028人 主審 山本真理 副審 田嶌うらら、橋本真光

 ちふれASエルフェン埼玉 1(1-0)0 大宮アルディージャVENTUS
               (0-0)

 得点 23分 埼玉・大沼

スポーツ文化公園は、隣のラグビー場に時々来ていたから、そんなに来てない気はしてなかったけれど、陸上競技場で試合を見たのは12年ぶりだったらしい。えらく久しぶりだった。

もっともラグビー場もCOVID19流行前の2019年に来たのが最後だったし、熊谷自体、それなりに久しぶり感はあった。

皇后杯の5回戦で、WEリーグチームはここから登場ということだったから、両チームともこれが初戦だったと思われる(特に対戦表とか、確認してないが)。
試合前は、WEリーグの成績的には、エルフェンの方が格下というイメージがあった。
しかし始まってみると、エルフェンの方が試合運びがしっかりしていた。バックラインを高く押し上げて、分厚い中盤を作り、大宮が攻め込む隙を作らない。マイボールは積極的にゴール前へ入れて行って、詰めていく。もしくはシュートを打っていく。そこまで精度の高い攻撃でなくても、とりあえず入れて行けば何かが起きるという思想が感じられたし、大宮の守備には連携の怪しさが目立っていたから、何か起きそうな気配はあった。実際、好機も生まれていた。
そして23分、ハーフウェイから少し入った所で、ファールでエルフェンがFKを獲得。そこからゴール前へ直接入れて行ったボールは、壁に当たってゴール前にこぼれた。これに対して大宮のディフェンスがお見合いしたような感じで、出足が遅れた隙に、エルフェン24番の大沼が突っ込み、蹴り込んで先制。
その後も、エルフェン優位で試合は進んだし、追加点機もあったけれど、そこは物に出来なかった。
前半が終盤に近付くにつれて、大宮もようやく積極的に仕掛ける場面が見られるようにはなった。特に左サイドバックから鮫島が上がっていくのが、結構目立っていた気がする。45分にはその鮫島が、後ろからのクロスを受けて枠を捉えるシュートを打った。記憶にある限りでは、前半、大宮の可能性のありそうなシュートはこれくらいじゃなかったかな。
エルフェン1点リードで折返し。

後半は、さすがに大宮が頭から積極的な試合運びを見せて、押し気味に試合を進めた。右サイドから有吉が仕掛けて行くことが多かったように思う。後半12分には前目の選手を入れ替え、そこから入った船木と井上が、エルフェンのディフェンスをうまくかわして好機を作っていた印象。ただ、エルフェンも浮足立つことはなく、堅実に守ったし、機を見て攻めあがることも出来ていた。
20分過ぎあたりから、大宮が相手ゴール前に攻め込んで、結構決定的な場面を何度か作った。しかし決めきれない。この後大宮は、さらに前目の選手を入れ替え、終盤にはDFを削って前に選手を増やして攻め立てたが、それでもエルフェンを崩し切ることは出来なかった。
結局、エルフェンが1-0で逃げ切った。

選手個人については、双方に大きな差はないように思えたし、スコアも1-0だから、五分に近い試合だったとは思う。ただ、印象としては、戦術的にしっかりしていたのはエルフェンの方で、大宮はチームとしてのまとまりが、いまひとつのように感じられた。悪い意味で選手任せのようだった感じ。
なので、結果は順当だったように思える。大宮のミス絡みの得点だけで、追加点が取れなかったのは気になるけれど、エルフェンは結構いいチームなんじゃないかという気がする。

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岐阜、名古屋、掛川(12/3,4)

名古屋対柏を見るために岐阜に行った。前回、行きそびれた辺りを、多少は観光しようかと思っていたけれど、そこまで時間はなかった。

前回、写真を取り損なっていた名鉄岐阜駅。
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岐阜公園。時間があれば、昆虫博物館に寄ってみたかったんだけど。次の機会があるのかどうか。
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前回は金華橋を渡ってスタジアムへ行ったので、今回は長良橋から行った。
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この日の夜は名古屋泊。名古屋で泊ったのは2019年以来だったんじゃないかな。宿は丸の内だったので、翌日は近所にある名古屋城へ行くことにした。名古屋城を見に行ったのは、約30年ぶり。その時は、地元の人に案内してもらって、城内へ入った。今回は行った時間が早すぎて、中へは入れなかった。というか、時間がかかることもあるので、そもそも城内に入りたいとはそんなに思っていなかった。なので、周囲を回って、外から見物した。考えてみると、30年前は逆に、外からはあまりじっくり見なかった気がするので、ちょうどよかったかもしれない。
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遠出するのも年内最後と思ったので、途中までは東海道線でゆっくり帰ることにして、夏に寄ろうとして、天候の具合などで断念した掛川に寄った。掛川は東海道新幹線で、(確か)唯一外へ出たことがない駅だった。

掛川駅。
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新幹線で通りかかると車窓から見える掛川城へは、以前から行ってみたいと思っていた。ようやく宿願を果たした。
スケールの大きい名古屋城を見た後なので、こじんまりとまとまった、かわいらしい城に見えた。
ただ、ここも中まで入っている時間の余裕はなかった。残念。
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天竜浜名湖鉄道の掛川駅。これで掛川、浜松、新所原という、天竜浜名湖鉄道のターミナル駅3か所全部に行ったことになるが、鉄道に乗ったことはまだ一度もない。
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掛川では、時間があれば花鳥園も行ってみたかったのだけど、残念ながら。ここも、次の機会があるのかどうか。

掛川から、新幹線で帰宅。いくつか思いを残しつつ、今年最後の遠出を終えた。

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J1リーグ第34節 名古屋対柏

2023.12.3(日) 14時45分 岐阜メモリアルセンター長良川競技場
観客 18475人 主審 上田益也 副審 日比野真、岩崎創一

 名古屋グランパス 1(0−0)1 柏レイソル
           (1−1)

 得点 71分 柏・マテウス サヴィオ
    90+5分 名古屋・ユンカー(PK)

 退場 90+3分 柏・ジエゴ

スタジアムで発生したトラブルで開場が遅れ、キックオフが予定から45分遅れ。トラブルの内容は、結局、あまりおおっぴらにはなっていないみたいだな…。
小雨が降っていたこともあって、試合開始前の入場は大混乱。事情が分かるまでは、また運営がなにかやらかしたのか?、と思った。今回は純粋に不可抗力のトラブルで、運営に責任はなかったけれど(もう少し、やりようがあったんじゃ、とは思ったが)、日頃が日頃なもので…。日頃の行いって、大事だなと思う。

J1残留争いの渦中にいた柏は、既に実質残留を決めていたし、名古屋も賞金額が絡む細かい順位争いはあるにしても、大きな物は何もかかっていない試合で、多分に消化試合だったと思う。
それを反映してか、名古屋の先発は少し変化があり、3バックは中谷が外れて、この試合が名古屋でのラストゲームになる丸山が入り、右が野上、中が藤井、左が丸山。ボランチは米本と、警告累積で出場停止の稲垣に代えて内田。右サイド久保、左サイド和泉。前3人は森島、永井、ユンカー。

試合が始まる頃には、屋根の下だったので体感的には分からなかったけれど、雨はやんでいた感じ。開始少し前には、虹も出た。

積極的に攻め合う立上りで、双方が互角にチャンスを作っていた。柏は相変わらず綺麗な連携で、トリッキーな繋ぎもあり、見ていて面白かったが、なかなかシュートまで行けない。名古屋の方がカウンター主体でシンプルなので、決定機に持ち込みやすいようには見えた。ただ、次第に柏が持つ時間が長くなって、20分頃には柏に決定的な場面が続いた。名古屋が押され気味に見え始めた。森島が割と前目の位置取りで、いまひとつ効いていないように思えた。
しかし前半終了近く、ユンカーの裏への縦パスから永井が抜け出し、ゴールを決める。いかにも名古屋らしい得点、と思ったが、オフサイドでノーゴール。
前半は0対0で折返し。

後半に入ると、名古屋が流れを掴んだように見えた。前半の前半に較べると、森島が少し引いた位置から、うまく組み立てているような感じがした。
しかしなかなか決定機には至らない。
20分に永井と久保を、貴田と森下に代えた。久保はこの日も食らいつく動きが目立ち、よくやっていたと思うけれど、ぼちぼち目一杯かな、という気がしないでもなくて、いいタイミングでシーズン終了を迎えたような気がする。オフの間に、さらに上を目指す感じかなと思う。
しかし25分に名古屋のCKのクリアから柏のカウンター。マテウスサヴィオの抜け出しを許し、一気にゴールを決められた。結局柏も、綺麗な崩しからでなく、カウンターでゴールってのが、なんとも。
追い掛ける立場の名古屋は、31分に両ボランチを下げて、山田がボランチ(森島もボランチのイメージだったかもしれない)、ターレスを前目に投入し、攻勢を強めたが、なかなか決定機を作れない。38分に和泉に代えて前田。それでもゴールの気配は薄かった。ロスタイム寸前、貴田が左からゴール前へクロスを入れ、逆から入った前田が合わせたが際どく凌がれる。
しかしこれがVAR判定の末にPK(DFのクリアが手に当たっていた)。ユンカーが決めて、土壇場で同点に追い付く。そのまま終了で、名古屋は今季リーグ戦、ホームゲーム無敗を達成。もっとも、8月半ばからのホームゲーム勝利なしも継続のまま、来季に向かうわけだ(^-^;。

名古屋はこれで鹿島に抜かれて、リーグ戦6位でフィニッシュ。前半戦2位で折り返したことを思えば、物足りない結果には違いない。中心選手だったマテウスを抜かれたことによる低迷は仕方なかったと思うのだけど、それ以降、建て直しが出来ずに、ほとんど勝てずに終ったことは、問題なしとは思わない。かなり最後の方まで、一応優勝の可能性のある圏内にいたのは、神戸とマリノスも失速したからだし、それがなければ、とっくに可能性はなくなっていた。6位で終れたのも、前半の大量の貯金が効いたからで、後半の成績だけなら、残留争いに噛んでいてもおかしくはなかった。
まあ、それだけマテウスの存在が大き過ぎたし、そこに依存し過ぎたチームだった、ということではあると思う。結局終盤までチームを切り替えられなかったことについては、優勝の可能性がいつまでもちらついていたせいもあるのだろうな。そういう意味では、監督だけの責任と考えるのは、少し酷な気はする。
鳥栖戦あたりから、ようやく切替の雰囲気が出て来てはいたわけで、その流れで来年に向かうんだろうと思うけれど、中心選手の移籍話もあるようだから、どうなるかはわからんわな。もっとも、森島が来年も居るのは確実だろうから、終盤の試合で森島が見せ始めた存在感が、とりあえずチーム作りの基本になるのは間違いないんだろう。

成行きで、今年はホームに11試合も行ってしまった。過去にそこまでの回数行った年はないし、これからもないと思うんで、そういう年に何か結果を残して欲しかった、という気持ちはないではないけど、まあ、仕方ない(そこまでのこだわりもない)。
来年は、陣容が何も見えてない現時点では、何ともいいようがないが、それなりに可能性は見えていたとはいえ、今年の後半の流れのまま行ってしまうと、余裕で残留争いに絡む可能性もあると思う。陣容次第ではあるけれど、それこそ今度こそ、長谷川健太のお手並み拝見というところだな。

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雨がやんで、虹が掛かった試合前。
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柏サポのみなさん。
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試合後の最終戦セレモニー。日が出ている間は、そこそこ暖かかったのだけど、この頃になると、試合開始が遅れた影響もあり、すっかり日が暮れていて、寒かった。
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感想「空中楼閣を盗め!」

「空中楼閣を盗め!」 ドナルド・E・ウエストレイク ハヤカワミステリ文庫
1980年刊行のクライムコメディ。邦訳は1983年。ウエストレイクのコメディは、いまいち面白くなくなってきたな、と思っていた時期の作品で、それもあって、今まで読んでいなかった。ただ、このところ、ウエストレイクの初期の作品が邦訳されることが続いていて、未読の作品群が少し気になっていた。そんな折に古書店で見掛けたので、買ってみた。

パリの博覧会で展示するために、南米の国・イエルバドーロから、城がパーツに分解して送られることになった。そのパーツの中には、イエルバドーロの権力者が国外に持ち出そうとした財宝が隠されていて、悪党一味がそれを奪おうとするが、どのパーツに隠されているかがわからないので、とりあえず城(パーツ)をまるごと奪おうとする。この設定自体が、壮大でバカバカしくて、面白いし、強奪の場面も、面白いアイディアがいろいろある。
さらに悪党一味が、リーダーは英語を話すが、それ以外はイギリス、ドイツ、フランス、イタリアの多国籍で、自国語しか話せないメンバーばかりなので、コミュケーション不全のドタバタが頻発する。ちなみに悪党一味に、半分を報酬として渡すという条件で話を持ちかけたイエルバドーロ反政府組織はスペイン語を話すので、ここもまた通じない(もちろん一部の人間に英語は通じる。そうでないとリーダーとコミュニケーションできないので、話が成り立たない…)。これも本書の核心のアイディア。

ウエストレイクらしいドタバタコメディで、事前に思っていたのと違い、とても楽しめた。

これは、翻訳が滑らかで読みやすかったことが、かなり影響している気がする。これまでに出たこの時期のウエストレイクの邦訳は、木村二郎が訳者のものが多いが、文章が硬くて読みにくいと以前から思っていた。この人はニューヨークに長く住んでいて、ウエストレイク本人とも交流があり、知識も豊富だから、原著を正確に訳そうとしているのだけど、その結果、ウエストレイクのまわりくどい文章が、直訳的に訳されて、読みにくくなっている印象がある。
本書の翻訳は井上一夫で、当時としてもやや古い世代の翻訳家だったこともあってか、どちらかといえば、日本語の小説としての読みやすさを意識した訳し方をしている感じがする。原文のまわりくどい言い回しが感じ取れる部分はあるけれど、そういうところも、なんとか素直な文章に落とし込んでいる。
その結果として、素直に面白く読める小説になっているのではないかな、と感じた。今まで、この時期の小説がいまひとつに思えた理由の一部は、翻訳にあったのかもしれない。あるいは、原作はいまひとつなのだけれど、それを翻訳が補っているとも考えられるのかもしれない。
もちろん、単純に本書が、この時期の作品の中では面白い部類に入るもの、という可能性もあるけれど。

それにしても、ヨーロッパというのは、言語が違っても、もう少しなんとかなるのでは、と思っていたのだけど(南欧のラテン系の言語はなんとなく通じる、みたいな話も聞いたことがある)、そうでもないのかな。

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