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J1リーグ第24節 神戸対名古屋

2024.7.20(土) 19時 スタジアム
観客 23650人 主審 木村博之 副審 堀越雅弘、塩津祐介

 ヴィッセル神戸 3(1−1)3 名古屋グランパス
          (2−2)

 得点 22分 名古屋・パトリック
    33分 神戸・佐々木
    54分 名古屋・稲垣
    90分 神戸・山内
    90+3分 神戸・菊池
    90+10分 名古屋・稲垣(PK)

DAZNで途中までライヴで見ていた。

名古屋の先発は3バックが左から河面、三國、内田。2ボランチは椎橋と稲垣。左サイド中山、右サイド野上。前3人が山岸、パトリック、森島。
前節大活躍だった相馬が不在で、いろいろ憶測が流れてたが、この辺は後述。永井も欠場で、前節の交代の時に、足を痛めた素振りがあったから、どうやらそのせいらしい。長引くようだと、また名古屋は戦力不足を抱えることになる。ただ、和泉は復帰して、ベンチに入った。

河面は戻ったにしても、相馬が欠けたメンツは、正直、勝ちから見はなされていた前々節までと、大差ないように思えたのだけれど、試合の入りは必ずしも悪くなかった。前3人の連携が、いつになくスムースだったように感じられた。裏狙いの攻撃ではあるけれど、可能性を感じさせるバスの繋がりが何度も見られた。
神戸が攻撃をうまく組み立てて、名古屋のゴール前に攻め込む場面が目立ったのは確かだけれど、神戸の守備にはいまひとつ安定感がなく、バタついているようには見えていた。神戸も選手が揃わない問題があったらしく、特に目についたのは山口螢の不在だったけれど、その辺の影響があったのかもしれない。
そして22分に、神戸のバックラインでパス回しにミスが起きてこぼれた球に、パトリックが詰めてゴールへ流し込んだ。名古屋が先制。きっちり詰めていくパトリックの良さが出た場面でもあったと思う。
しかし攻撃では一枚上手の神戸が、33分にゴール前へのクロスから、佐々木が決めて同点。少し名古屋が守備で付き切れなかった感もある失点だった。
ここから神戸に勢いが出てきたような気はしたけれど、双方追加点はなく、1-1で折返し。

後半も前半終盤と同じような雰囲気で、神戸がやや押し気味だったと思う。
しかし54分に、名古屋が左CKを得た。森島が蹴ったボールは、ペナルティから少し離れたゴール正面の稲垣の所へ飛び、これをボレーで合わせた豪快なミドルがゴールに決まった。
稲垣が時々決める見事なゴールだった。ただ、もちろん狙っているにしても、決まる確率は低いし、とりあえず打ってるレベルだと思うので、「得意の」とは言えないんじゃないかな。中継でいつもそういう言い方がされるのに、かなり違和感がある。しかも、あれが決まる頻度で、名古屋の得点力が左右されてるという印象。そんなバクチみたいな得点に依存してるから、名古屋はこうなってる、とも思っている。
とはいえ名古屋が再度リード。

訳あって、ここで一旦試合観戦を中断。以降は見逃し配信で、少し遅れて見た。

神戸が分厚く仕掛けてきたが、いまひとつ安定感がないのは相変わらずで、名古屋の守備を崩しきるには至らない。選手を入れ替えてきても、流れは変わっていないように見えた。このまま名古屋が逃げ切りそうだな、と思っていた。
名古屋は77分に中山を和泉に交代。左サイドのプレーヤーとして、中山よりも和泉の方が適当なのは間違いないし、和泉を久々の実戦で慣らす感じだったのかな。そして85分にパトリックをハチヤンレに代えたのは、守備固めだったか。
しかし逃げきったかと思った90分、直前に交代出場した山内に右から仕掛けられ、ドリブルを止められないまま、カットインからのシュートを許し、土壇場で追い付かれた。
91分に内田を重廣に代えて得点を取りに行ったが、93分に山川のクロスから菊池に決められ逆転を許す。
しかし、97分、和泉のクロスに山岸が飛び込むと、飛び出してきたGK前川のパンチングが山岸の顔にヒットしてPKとなる。稲垣が決めて同点に追い付き、試合終了。

観戦を中断した時点では、ここまでもつれているとは思いもしなかった。
もったいない引分けだったとは思うけれど、内容的に言えば、失点はどれもきっちり崩されたもの、得点はどれも、相手のミスが直接的に絡んだりした、多分にラッキーなもの。それを考えれば、神戸が不安定だったにしても、力の差がはっきりある中で、拾った勝ち点1だったとは思う。前節の勝利を挟んで、また勝てない名古屋が戻って来た、とも思える。
ただ、前3人が、今年見た中では屈指の出来だったと思う。森島のセンスの良さが発揮されていた感があって、それは受け手がパトリックと山岸という、名古屋にあまり染まっていない2人だったからじゃないかな、と思っている。かなり大雑把な言い方になるけれど、彼らが元々在籍していたチームにあったような、攻撃面での選手間の息の合った連携は、名古屋にはほとんど見られないものと思っているし、森島が加入後、どうにもパッとしないのも、そのせいじゃないかと以前から考えている。だから、この試合の森島の相方がパトリックと山岸だったのが、良かったんじゃないかと思う。山岸についても、それは言えそう。もちろん今後の試合で、そんなことはなくて、選手が入れ替わっても、こういう連携はできるというのを、見せてもらえればいいんだけれどね。
相馬に関しては、翌日には、早々と町田への移籍が決まっていたのが理由と分かった(実際は、契約上は、この試合は出られたらしいのだけど、コンディションの問題があったらしい)。たった1試合の腰掛け復帰だった。個人的には元々、相馬ってそういうプレイヤーだろう、という認識ではあったけれど、さすがに驚いた。ただ、柏戦の勝ち点3ほ相馬のおかげと言って間違いではないだろうし、移籍で相当な大金が名古屋に入っても来るらしいので、取引としては悪くないと思う。とはいえ、相馬に対する思い入れは、鹿島に行った時点で、元々、ほとんどなくなってはいたし、これで完全になくなったかな。選手としての力は認めてるから、万一、また名古屋に戻って来たとして、活躍すれば応援はするけれどね。

これでJ1は20日ほどのインターバルに入る。故障者は戻ってくるかもしれないし、相馬が抜けた代りに加入する選手もいるようなので、インターバル明け、何か変化はあるだろうと思う。どう変わって来るか。
それにしても、柏に負けて、神戸にも負けてのインターバルだったら、さすがに長谷川健太の立場は相当悪くなっていたと思うし、うまいこと救われたなという感じ。相馬がピンポイントで復帰したり、神戸のチーム状態が悪かったり、悪運が強いとしか言いようがない。思えば、3月の3連敗スタートも、柏に勝ったことをきっかけに、うやむやにしたわけで、彼は柏には足を向けて寝れないに違いない。
(2024.7.27)

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J1リーグ第23節 名古屋対柏

2024.7.14(日) 18時 豊田スタジアム
観客 31961人 主審 飯田淳平 副審 赤阪修、森川浩次

 名古屋グランパス 2(0−1)1 柏レイソル
           (2−0)

 得点 7分 柏・マテウス サヴィオ
    54分 名古屋・相馬
    56分 名古屋・山岸

DAZNで見ていた。

名古屋の先発には、ポルトガル2部のチームにレンタル移籍していた相馬が、復帰して、いきなり登場。
3バックは左から河面、三國、内田(ハチャンレは?)。2ボランチが椎橋と稲垣。左サイド相馬、右サイド中山。前3人が山岸、永井、森島。

互いに攻め合う立上りだったけれど、例によって、柏のマテウス サヴィオが華々しい働きで、7分に早々と先制ゴールまで決めてしまった。内田と中山の右サイドを、マテウス サヴィオを中心とした柏の攻撃陣が振り回していたという印象。まあ、それは柏戦にありがちな展開でもあるけれど、いつもは決定力不足な柏が優勢をゴールにつなげられず、もたついているうちに名古屋が先制してしまって、勝ってしまうという感じ。しかしこの日は柏に先手を取られて、大丈夫か?という気配になった。
この流れを受けて名古屋は、徐々に中山と相馬がサイドを入れ替えていったように思う。マテウス サヴィオやジエゴががしがし攻め込んでくる右サイドに対抗するには、相馬の力強さが必要と考えたのだろうし、それは当たっていたと思う。次第に名古屋優勢な流れになり、相馬が惜しいシュートを打つ場面も生まれた。柏もシュートは打つものの、いつもの決定力不足感が目立ち始めた。
それでも0-1で前半終了。

ハーフタイムに柏は選手を入れ替えて、陣形もいじってきたが、どちらかというと、守備に力点を置いた感じのする変更だったので、名古屋が優勢な雰囲気は変わらなかった。しかし名古屋は、なかなか得点に至れない。
53分に、後半は頭から左サイドに入っていた中山を、左サイドが本職の山中に交代。これは妥当な交代だったと思う。
そしてその山中が、54分にCKを蹴った。一度はクリアされたが、これで再度得たCKを山中が蹴り込み、河面が流したボールを、逆サイドから相馬が詰めてゴール。復帰戦で得点とは、出来過ぎ。
そして56分には、失点直後でばたついていた柏ディフェンスの乱れを突いて、山岸がゴール。あっという間の逆転。
これ以降は名古屋が主導権を握った試合になった。柏はマテウス サヴィオは目立つものの、好機は作れても、誰も決められない。
そのまま試合は進み、名古屋は78分に相馬を野上に代えた。守備を固めたかな、という感じ。
スタンドで観客の事故?があった影響で、試合が止まっていた時間が長く、ロスタイムが長かった。90+8分には永井がパトリックに交代。その後も試合は続いた。
このまますんなり終りそうだなと思っていたが、90+16分、左サイドからマテウス サヴィオがゴール前にクロスを入れ、受けた片山が決定的なシュート。しかしランゲラックがビッグセーブを見せ、名古屋が逃げ切った。

終ってみれば、結局、いつもの柏戦だったか、という気はした。
ただ、明らかに相馬の働きで勝った試合ではある。相馬は、今季、名古屋のサイドに起用されたどの選手よりも存在感があったと思うし、ゴールまで決めてしまったからね。
ここまでの名古屋のサイドの選手は、足が速いとか、セットプレーのボールを巧く蹴るとか、売りがある場合でも、それ以外のプレーに物足りなさがあって、突出した能力はあっても単機能な選手、という感じだった。相馬は、個々のプレー自体は、そういう選手たちには劣るとしても、そこそこのプレースは蹴れるし、そこそこ足も速いし、ボールを来そうな場所を察知して、そこに現れる嗅覚も持っている、同点ゴールもそこから生まれた。和泉や内田のポリヴァレントとは少し違った意味で、単機能ではなく、いろんなことが出来て、気が利いている選手だと思う。ヨーロッパに行って成長したというよりは、元々、そういう選手だったと思うし、それがこの試合で遺憾なく発揮されたという印象、
この試合は、欠場したハチャンレはともかく、出場停止明けや故障からの復帰で、一通りメンツが揃っていたし、割と相性のいい柏が相手だったこともあって、名古屋は4連敗中とはいえ(だからこそ)、勝つしかない試合だったと思う。負けていたら、長谷川健太はかなり厳しい立場に追い込まれた可能性があったんじゃないかな。そこに相馬が戻って来て、戦力としてきっちり結果を出したわけだから、長谷川は悪運が強かった。とりあえず、相馬が長谷川を救った形じゃないだろうか。
ただ、相馬が名古屋を救ったことになるかどうかは、まだ分からないと思っている。この先もコンスタントに実績を残せるのかどうかというのもあるけれど、相馬の復帰によって、若手の出場枠が減ってくる可能性が高いし、それは今季初めから、長谷川健太がこだわってきた若手の起用・育成という方向性に反するのでは、と思える。そうなった時、長い目で見て、それがチームのためになるかどうかも、現時点では分からない気がする。
もっとも、長谷川がこだわってきたチーム作りが機能していないから、今のような結果になっているのも確かなので。
長谷川健太がこの先、どういうふうにチームを回していくのか、興味をそそられる。

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イースタンリーグ ヤクルト対ロッテ(7/14)

2024.7.14 (日) 12時半 ヤクルト戸田球場
M 305003000 11
S 210020001 6
[敗]竹山、[勝]古谷
[H]S:澤井(二木)、M:山口(竹山)

朝から雨が降ったり止んだりで、試合やるんだろうかと思いながら行ったが、開催だった。初めの方は少し雨がぱらついたが、基本的には試合中は(少なくとも見ていた間は)、雨は降らなくて助かった。ただ、曇っていて気温は低めだった割に、やたらと蒸していて、変にしんどかったけれど。

先発投手はヤクルトが竹山、ロッテが二木。
初回、竹山は先頭の山口にヒットを打たれ、次の菅野はストレートの四球。続く寺地にツーベースを打たれて先制される。さらに池田に犠飛を打たれて2点目。山本大にも犠飛を打たれて3点目。乱調な立ち上がり。
しかし、その裏、ヒットの川端を塁に置いて、澤井がスコアボードに当たるツーランを放ち、2-3。2回裏には北村恵がヒットで出て。伊藤のツーベースで3塁へ進み、西村の内野ゴロで還って、3-3の同点。
でも竹山は、3回に先頭の山口にレフトへライナーのホームランを打たれて、また勝ち越しを許した。さらにヒットと2四球で満塁にして、愛斗に走者一掃のスリーベースを打たれ、続くマーティンにもツーベースを打たれて、この回5失点。この後、竹山に代った尾仲が3回表を終らせた。尾仲は4回も投げて無失点。5回は原樹理が投げて三者凡退と好投。
ロッテも早目の継投で、3回からは古谷。いまひとつ安定感がなく、5回裏にはバッテリーエラーと太田のタイムリーで、ヤクルトは2点を返した。
しかし6回表、ヤクルトがマウンドに送った石原は、いきなり3連打で満塁にすると、バッテリーエラーで1点を失い、さらに山本大のツーベースで2失点。スコアは5-11になった。
その後はスコアは落ち着いた。ヤクルトは7回松本健、8回宮川が登板。ロッテは6回菊地、7回東妻、8回澤田が無失点。8回裏途中で引き上げたので、その後は見ていないが、9回表は柴田が投げて無失点。その裏は吉田が登板し、西村のタイムリーで、ヤクルトが1点を返したらしい。

ヤクルト先発の竹山の出来の悪さが、試合のベースを作ってしまった感じ。他の投手も、いまいちぱっとしない出来の選手が多かった。点がたくさん入って、景気は良かったけれど、泥沼ぽい試合だった。
このところ見た試合は、不思議と速い試合が多くて、3時半近くになっても終らない試合は久々だったけれど、こういう泥沼試合もイースタンだよな、と思う。

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感想「チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク」

「チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク」 ジョン・スラデック 竹書房文庫
1983年に刊行されたもので、邦訳刊行は昨年の9月。春先に買ったら、2月に出た2刷だった。結構売れているのかな。
スラデックの作品は過去に何作か読んで、ゲテモノだな、という結論に達してからは、あまり積極的に読む気はなくなっていたけれど、本書はこのところひいきにしている竹書房文庫から出たので、読んでみる気になった。
そうはいってもスラデックは、トマス・ディッシュの盟友だったとか、いろいろ気になるエピソードがあったりして、何となく気になる作家ではあるので。

ロボットの行動を縛る「アシモフ回路」の制限を受けずに動けることに気付いたロボット・チクタクが、人間に危害を加えつつ、どんどん権力を握っていく話。アシモフのロボット三原則のパロディみたいな話だけど、スラデックは他にも、こういう小説を書いていると聞いた覚えがあるような。
やっぱりゲテモノだなと思った。スラップスティックなコメディではあるけれど、血みどろでグチャグチャ。リアリズムで書いていないから、読んでいて耐えられるけれど。楽しめたとは言い難い。
ロボットの目から人間を見ることで、人間社会のバカバカしさ・愚かさを、皮肉っている作品ではあると思う。そこに面白みを覚えないではないけど、描き方が悪趣味すぎるので。
ただ、予想の範囲内ではあるから、やっぱりこういう小説だったか、と言うしかない。

現在と過去を話が行き来する構成で、それが最後に生きてくる。ちょっとミステリぽい仕掛けだな、と思った。ミステリ作家でもあるスラデックの、らしさが見えているのかもしれない。ぐちゃぐちゃなようでいて、小説として、かなり考えた構成がされているような気もする。そうはいっても、悪趣味だな、という感想を打ち消すほどではないのだけど。
ただ、この作家は、言葉遊びなどを多用する、というか、むしろそこに大きなポイントがある作風のはずなので(「スラデック言語遊戯短編集」を、大昔に読んでいる)、翻訳ではそういう部分の面白みは、どうしてもうまく伝わって来ないはず。原語で読んだとしても、知識が十分にないと、同じことになりそう。そうすると、面白さのコアの部分が欠落するから、その外側の悪趣味な所ばかりが、より強調されて見えてしまっているのかもしれない、ということは思った。自分のような読者には、楽しむのが難しい作家なのだろうなと思う。
(2024.6.16)

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感想「屍衣にポケットはない」

「屍衣にポケットはない」 ホレス・マッコイ 新潮文庫
1937年に刊行された小説。
ずっと以前、ハードボイルド的な小説を読み始めた時期に、よく参考にしていた小鷹信光の文章に、この作家がしばしば言及されていた。興味を感じて、当時ハヤカワミステリ文庫から出た「明日に別れの接吻を」を読んでみたけれど、正直、あまり面白いとは思えなかった。複雑な人格で、感情移入を拒否するような主人公の設定に付き合うには、この手の小説の経験が足りなかった。
その後、もう一冊の邦訳「彼らは廃馬を撃つ」を読んだ。こちらの方が抒情性がより強く感じられて、だいぶ取っ付きやすかったこともあり、悪い印象は持たなかった。映画化されたものもテレビで見た(映画の方を先に見ていたかもしれない)。つまらない作家ではなさそうという印象が残った。
そして、未訳の「No Pockets in a Shroud」という小説があるという、小鷹信光の紹介も覚えていたから、今回邦訳されたのを見て、今頃?、とは思いつつ、読んでみる気になった。

簡単にまとめてしまえば、アメリカの地方都市を舞台に、正義感の強い新聞記者が、街を支配するあくどい権力者たちに、ほぼ孤立無援で闘いを挑むという話。ただ、実際はそこまで単純ではない。
主人公は社会正義という部分では、正義感の強い人間だけれど、自分の目的のためなら、返せる見込みのない借金をすることや、自分に対する女性の恋愛感情を利用することに躊躇しない、善悪の観念がずれているように見える人物。また、思いこみだけで突っ走り、友人の忠告に耳を貸さない破滅型の人間でもある。無条件で擁護できる人物ではないし、とても感情移入は出来ない。そういう意味では「明日に別れの接吻を」の主人公によく似ている気がする。ただし、なにせそちらは40年くらい前に読んだ本だから、おぼろげな記憶が合っていればだけれど(^^;
自分も経験を積んできたから、「明日に別れの接吻を」 の時ほどの戸惑いはなかったけれど、やはり面白く読める小説とは言い難かった。ただ、なぜこんなキャラクター設定で、素直に愉しめるとも思えない小説を書いたんだろうという疑念に対しては、杉江松恋の解説が、本書の成り立ちも含め、マッコイについて丁寧に説明していて、とても有り難かった。いろいろもやもやを感じる作家だったマッコイについて、理解の仕方をひとつ提示してくれた気がする。

ただ、小説としての面白さの有無とは別に、主人公の怒りに、現代に通じるものを感じて、共感を覚えずにはいられない部分はあった。特に、ヒトラーが台頭して、ヨーロッパがファシズムに席巻されようとしている本書の背景と、今、プーチンがウクライナへ侵攻してヨーロッパでやっていることは、地域的にもきれいに重なって見える。また、それだけではなく、もっと普遍的な、本書で描かれる権力者の不正や弱者への抑圧、差別の問題などの出口の見えなさは、今でも、世界でも日本でも普通に見聞きすることばかり。しかも、こうしたことは、近年、急激に悪化しているようにも感じている。もっとも、元々あったものが、単によく見えるようになっただけ、という面も確かにあるのだろう、とは思うけれど。
いずれにしても、本書に描かれている世界が、違う時代の違い世界のようにはとても思えなかった。
こんなふうに不透明で、絶望感が強い世界には、こういう自暴自棄的なキャラクターの方が、むしろ自然なのかもしれないという気もしてしまった。
(2024.6.18)

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「フェラーリ」

避暑目的で見に行った映画。
そういう理由だったので、あまり神経に触るような映画は見たくなかった。ホラーやシリアスなサスペンスは論外だし、感動系、家族ものとか、ほのぼの物とかは、元々、かなり嫌いだし、消去して残ったのがこれだった。

でも、悪くない選択だった。フェラーリの社長だったエンツォ・フェラーリが、1950年代の後半に陥った苦境を描いたもので、出てくるのは因業なイタリア人とか、カーレースに取り憑かれてるイカれた人たちばかりだから、自分とほぼ接点がないので、共感とかの余地がなくて、気楽に見れた。
一方で、人物同士の駆引きとか、話の回し方とか、惹き付けられる要素はいろいろあったから、十分楽しむことも出来た。
どこまでが史実通りなのかは知らないが、一応、伝記映画的なものらしい。
あちこちにわざとらしいフラグ的な場面があって、やっぱりそうなるんだな、みたいに思いながら見ていたけれど、それも愛嬌ということで。

なお、当然スポーツカーが走る場面が多いし、迫力はあったけれど、車にはあんまり興味がないので、その辺の魅力はそんなにはわからない。あと、事故の場面を見るのが怖いので、日頃、レースの中継とかはほぼ見ない。そんな人間が、好きこのんで見に行く映画だったのか?、ということになるけど、上述の通り、消去法で残った映画だったのでねえ…。
そういうことなので、クライマックスのミッレミリアとか、無茶なレースだなあ、なんか起きそうだなと思って、少しドキドキしてたが、やっぱりそういうことになるんだなという感じだった。そんなにどぎつい見せ方にはなってなかったんで、そんなには堪えなかった。


ペネロペ・クルスが演じてたラウラが、いいキャラだった。

2時間を超える長めの上映時間も含め、自分にとっては、避暑という目的には合った映画だったと思う。

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J1リーグ第22節 町田対名古屋

2024.7.6(土) 18時 町田GIONスタジアム
観客 9117人 主審 上村篤史 副審 大塚晴弘、西村幹也

 町田ゼルビア 1(1−0)0 名古屋グランパス
         (0−0)

 得点 30分 町田・下田

現地観戦。

現地には早目に着いたが、雷鳴が聞こえたり、結構しっかりした雨が降り出したりして、大丈夫か?と思った。しかし試合開始前までに雨は止んだし、試合後も雨に降られずに帰ることが出来た。同時間帯、東京の別のエリアや埼玉では、試合中止や開始時間遅れが起きるくらいの豪雨だったらしいから、幸運だった。
雨を警戒して、ビジター席は回避して、ビジターグッズ不可の席を取っていたのも良かった。そういうわけで、一般客として観戦していた。

名古屋の先発は、前節からだいぶ変わった。三國の出場停止に伴い、3バックは左から、野上、ハチヤンレ、稲垣。稲垣を頭からDFで使ったのは、初めてじゃないかな。ボランチは森島と椎橋。右サイド久保。左サイドは、とりあえずスタート時は、出場停止から復帰した内田だったはず。前3人が中山、榊原、山岸。
しかし、中山と内田の位置関係は、試合が進むにつれて曖昧になっていたと思う。

立ち上がりに一発、榊原のクロスから内田が惜しいシュートを打った(GKがセーブ)場面があったけれど、それ以降は、ほぼ町田に主導権を握られていた印象。こぼれ球はほぼ拾われるし、競り合いにはほぼ負ける。選手の個人的能力というよりも、選手同士の連携がしっかりしていたり、ひとりひとりがプレーを予測して動いているので、対応が速い。名古屋の試合を見ていて、たいていの試合で相手チームに対して、いつも思うことだけど、この試合は特にそれを感じた。
シュートも結構打たれていたと思うけれど、精度に難があったから、それほど危険な感じはしてなかった。ただ、これだけ劣勢だと、そのうちやられちゃうかな、という予感はあって、30分に下田と平河の連携から下田に決められたのは、特に意外でもなかった。
前半の後半には、中山はもうサイドに下がって、内田の方が前目に居たような気がしたんだけど、どうだったかな。中山の前での起用は、もう1人永井を作りたい、くらいの意味じゃないかと思ってるけど、中山には永井の悪どさが感じられないんで、難しい気がする。

後半は榊原を永井に交代させてスタート。永井は開始早々、左サイドを上がった(この時点では完全に左サイドの)中山からのクロスで惜しいシュート。この辺はさすがという感じ。
永井は確かに効いていて、その影響で、名古屋がそこそこ攻められるようになっていったけれど、相手を押し込むほどの勢いではなかったし、むしろ後半の方が、町田のシュートは多かった気がする。
66分に、山岸に代ってパトリックが入り、これで前線にターゲットが出来て、名古屋は攻めやすくなるかなと思ったけれど、それほど効果は上がらず。
77分には、久保と野上を山中と河面に交代。河面の復帰は朗報には違いない。
しかし79分に、町田のGKからのフィードを、オ セフン→藤尾→下田ときれいにつながれて、ゴールに決められた。ただこれはVARが介入し、オンフィールドレビューで、オ セフンと稲垣の競り合いで、オ セフンにファールがあったと認定され、ノーゴール。鮮やかな攻撃だったけれどね。
名古屋は助かったものの、直後に内田を下げて倍井を投入し、攻撃を分厚くしても、決定的なシュートにも至れず。追い付けないまま、試合終了。

点差は僅差だけれど、内容的には名古屋の完敗だったと思う。気持ちで負けてるという言い方もあるみたいだけれど、それ以前に、チームが形になってないと思う。そもそも監督が、形を作ろうとしているのかどうかも、よくわからない。故障者や出場停止の影響はあるにしても、布陣もメンバーも一定しないし、彼がそこに入るんだ?というような、意表を突いた起用も、はまれば名監督と思えるけれど、はまってないのでね。一方で、内田や和泉のようなポリヴァレントな選手を重用しているところも、要するに現場任せなのかな、という気配を感じるし。
ただ、河面は戻ってきたし、さらに他にも欠けていた選手が戻ってくれば、その辺はいくらか安定してくるかもしれない。
逆に言えば、選手が戻ってきても結果が出なかったら、さすがにこの監督は見込みがないと、考えるべきじゃないかな。そういう意味では、出場停止選手がいない次の柏戦は、彼の正念場かもしれない。選手がある程度揃って、比較的相性もいい柏が相手で、それでも結果が出ないようなら、もう無理と思われても仕方ない気がする。

なお、スタジアムへの交通アクセスを心配していたが、行きは多摩センターからシャトルバスで快適だったし、帰りも、警戒して、試合終了後、すぐに鶴川行シャトルバス乗り場に向かったら、すぐ乗れて、ストレスなく鶴川駅まで行けたから、全然問題なかった。帰りは、もたもたしてたら、2017年の二の舞だったのかどうかは分からないけど、素早く動けば、そこまでビビることはないらしいというのは分かった(^^;。
雨に降られなかったことも含め、意外なくらい快適な観戦だった。快適でなかったのは、チームの勝敗くらいだけど、正直、これも織り込み済みだったのでね…。
町田は、ひとつひとつのプレーを見ている限り、首位チームらしい貫録までは感じなかったけれど、チームとしてまとまっているのは、よくわかったし、3月に見た時よりも良くなっていたと思う。でも、シュートの精度とかは、もっと上げていかないと、さすがにこのままフィニッシュするのは難しいのでは、と思ったけれど、まあ、余計なお世話だろうな。

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名古屋のゴール裏のみなさん。
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イースタンリーグ ヤクルト対楽天(7/3)

2024.7.3 (水) 12時半 ヤクルト戸田球場
E 000000001 1
S 10300100X 5
[勝]原、[敗]岸

晴れてて暑かった。ただ、試合開始頃は土手上も無風だったが、次第に風が吹き始めて、ましになってきた。

先発投手はヤクルトが金久保、楽天が岸。
金久保は初回先頭打者の伊藤にヒットを打たれたが、その後は一人の走者を出すこともなく、3回まで投げた。
一方の岸に対してのヤクルトは、こちらも初回先頭打者の増田がヒットで出て、盗塁(というか、エンドラン崩れ)で二進。澤井のボテボテの当りが二遊間を抜けてヒットになり、増田が還って先制。
3回は、またも先頭の増田がショート(入江)のエラーで出塁。川端のヒットで走者1-2塁になり、澤井がライトオーバーのツーベースで増田が還って2点目。さらに濱田のヒットで2者生還。4-0。
4回表、ヤクルトの投手は原樹理に交代。2安打で2死2-3塁にされたが、切り抜けた。5回も先頭打者にヒットを打たれたが、後続を抑えた。やや不安定感はあったものの、無失点でしのいだ。
6回以降のヤクルトの投手は1イニング交代。6回は嘉弥真で三者凡退。
その裏、楽天は岸が続投したが、澤井がツーベースで出て、内野ゴロで三進し、鈴木の犠飛で生還して5-0。
以降、ヤクルトは7回エスパーダ、8回柴田が登板し、いずれも三者凡退。岸も7-8回の2イニングは三者凡退。
9回表のヤクルトの投手は長谷川。先頭の平良にストレートの四球。次打者の二ゴロはセカンド(小森)の野選で、無死1-2塁になってしまう。ここで代打江川に左中間にヒットを打たれ、楽天に1点を返された。しかしその後は凡退で、5-1で試合終了。

勝ち投手は原樹理で、棚ぼた的な感じ。内容的には金久保が良かったと思うが、先発で3回しか投げなかったからね。
岸は5失点してるが8回完投。球数も109球とそんなに多くない。ヒットはそれなりに打たれているが、要所で力強い球を投げ込むことも出来ていた。失点も、バックの守備がもう少し良ければ、という感はあって、そこまで悪いピッチングではなかったかもしれない。ただ、それでも金久保の方が出来が良かったように思えたし、往年の岸のイメージからすると、なにげに時の流れを感じた気はした。

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