感想「チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク」
「チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク」 ジョン・スラデック 竹書房文庫
1983年に刊行されたもので、邦訳刊行は昨年の9月。春先に買ったら、2月に出た2刷だった。結構売れているのかな。
スラデックの作品は過去に何作か読んで、ゲテモノだな、という結論に達してからは、あまり積極的に読む気はなくなっていたけれど、本書はこのところひいきにしている竹書房文庫から出たので、読んでみる気になった。
そうはいってもスラデックは、トマス・ディッシュの盟友だったとか、いろいろ気になるエピソードがあったりして、何となく気になる作家ではあるので。
ロボットの行動を縛る「アシモフ回路」の制限を受けずに動けることに気付いたロボット・チクタクが、人間に危害を加えつつ、どんどん権力を握っていく話。アシモフのロボット三原則のパロディみたいな話だけど、スラデックは他にも、こういう小説を書いていると聞いた覚えがあるような。
やっぱりゲテモノだなと思った。スラップスティックなコメディではあるけれど、血みどろでグチャグチャ。リアリズムで書いていないから、読んでいて耐えられるけれど。楽しめたとは言い難い。
ロボットの目から人間を見ることで、人間社会のバカバカしさ・愚かさを、皮肉っている作品ではあると思う。そこに面白みを覚えないではないけど、描き方が悪趣味すぎるので。
ただ、予想の範囲内ではあるから、やっぱりこういう小説だったか、と言うしかない。
現在と過去を話が行き来する構成で、それが最後に生きてくる。ちょっとミステリぽい仕掛けだな、と思った。ミステリ作家でもあるスラデックの、らしさが見えているのかもしれない。ぐちゃぐちゃなようでいて、小説として、かなり考えた構成がされているような気もする。そうはいっても、悪趣味だな、という感想を打ち消すほどではないのだけど。
ただ、この作家は、言葉遊びなどを多用する、というか、むしろそこに大きなポイントがある作風のはずなので(「スラデック言語遊戯短編集」を、大昔に読んでいる)、翻訳ではそういう部分の面白みは、どうしてもうまく伝わって来ないはず。原語で読んだとしても、知識が十分にないと、同じことになりそう。そうすると、面白さのコアの部分が欠落するから、その外側の悪趣味な所ばかりが、より強調されて見えてしまっているのかもしれない、ということは思った。自分のような読者には、楽しむのが難しい作家なのだろうなと思う。
(2024.6.16)
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