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感想「列をなす棺」

「列をなす棺」 エドマンド・クリスピン 論創社
久し振りに邦訳が出て、クリスピンの長篇を読むことが出来た。
元々は「お楽しみの埋葬」のスラップスティックぶりが好きで読み始めた作家だけど、一時期、集中的に出た邦訳作品も含めて、それ以外も一通り読んで、「お楽しみの埋葬」の方が例外的に突出した作品、と理解している。それでも、一番好きなのが「お楽しみの埋葬」なのは変わらないが、この人の作品は気持ちよく読めるので、好き。本格ミステリとしての作りの丁寧さ、穏やかなユーモア、派手な展開でも抑制が効いていて、良識を感じさせる語り口、といったところかな。
本書はそういう中でも、まとまりのいい作品じゃないかと思う。その分、眼を引くような売りが乏しいとは言えるのかも知れないが。だから、邦訳が遅れたのかな? でも十分面白く読めた。
ジュディが暴走する部分には、スラップスティック的な要素が現れているかな、と思った。
解説は参考になった。なにせ、作品の背景にある教養的な部分は、自分にはほとんど分からないので、そういう所を補ってくれるのは有難い。まあ、分からなくても楽しめるし、それでいいんだろうと思ってもいるけれど。また、時代性についての考察も興味深かった。過去に読んだ中には、第二次大戦の影響を感じて、そういうことをいくらか考えた作品はあったけれど(その辺も解説で触れられている)、イアン・フレミングと時代が重なるような時期の作家だったと知ると、また少し見方も変わってくるような気がする。
(2024.12.20)

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