感想「日蝕・一月物語」
「日蝕・一月物語」 平野啓一郎 新潮文庫
それぞれ単独で新潮文庫から出ていた「日蝕」「一月物語」という2篇の小説を、合本で再刊したものとのこと。
平野啓一郎は、近年、SNSでの発言に触れることがしばしばあって、語られている内容に共感することが多いけれど、作品を全く読んでいないので、どういう作家なんだろうと、漠然と思っていた。家にころがっているのを、たまたま見付けたので、読んでみることにした。なお、「日蝕」が芥川賞受賞作ということは、さすがに知っていた。
内容自体は、擬古文的に書かれた凝った幻想小説というところかな、と思った。「日蝕」は15世紀フランス、「一月物語」は明治時代の日本を舞台にした話で、どちらもよく調べて丁寧に書かれていると思ったものの、なぜこういう小説を書いたのかという意図が見えなかった。自分がこういう小説に不慣れなこともあるのだろうけれど、文体も含め、手の込んだラノベ?、みたいな印象だった。
もちろん、幻想的な小説を書きたいという意図なのだろうけれど、背景といい、文体といい、あまりにも手が込んでいるので、それが全てとは思えないような気がしてしまう。もっとも、幻想文学の書き手というのは、趣味の世界というか、凝り性な作家が多いという印象はあるから、そういうことなのかもしれない。
なぜこれが芥川賞だったのかも、よくわからない。20数年前には、こういうのが斬新さだったんだろうか、とは思った。
興味深くは読めたとはいえ、よく分からないことだらけだったけれど、平野啓一郎は謎の作家である、という書き出しの巻末の解説(三浦雅士)を読んで、自分の実感がそれほど的外れなものではなかったのかな、と思った。分からなくて、不思議はないのかもしれない。
なぜこういう小説を書いたのかという意図が見えない、という点についても、この解説を読んだ後では、やはり、上記したような、そんなに単純なことではないのでは、という気がしてしまう。
他の著作は、本書とは全く様相が違っているようだし、著作毎に違ってもいるらしい。SNSで見る発言が、本書の印象とあまり結びつかないのも当り前なんだな。
そう聞いて、他の著作にも興味を感じたけれど、実際に読むかどうかはなんともいえない。
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 感想「私立探偵マニー・ムーン」(2026.08.08)
- 感想「ガイズ&ドールズ」(2025.10.07)
- 感想「うしろにご用心!」(2025.03.31)
- 感想「日蝕・一月物語」(2025.04.30)
- 感想「マイケル・シェーン登場」(2025.08.30)





コメント