2011年に読んだ本

海外小説
ウェイウェイオール、ロノ 鎮魂歌は歌わない
ウッドハウス、P・G がんばれ、ジーヴス 
ウッドハウス、P・G お呼びだ、ジーヴス 
ウッドハウス、P・G 感謝だ、ジーヴス 
カヴァン、アンナ  
カーリイ、ジャック ブラッド・ブラザー 
クイーン、エラリー Zの悲劇 
クリスピン、エドマンド 消えた玩具屋
クリスピン、エドマンド お楽しみの埋葬
クレイス、ジム 死んでいる
クロウリー、ジョン ナイチンゲールは夜に歌う
ゴアズ、ジョー 硝子の暗殺者 
ゴールドマン、ウィリアム ティンセル 
スタウト、レックス IF DEATH EVER SLEPT
チェスタトン、G・K 新ナポレオン奇譚
トンプスン、ジム 内なる殺人者 
バウトン、ジム+アジノフ、エリオット ストライク・ゾーン
ブロック、ローレンス 殺し屋 最後の仕事 
マクドナルド、フィリップ フライアーズ・パードン館の謎
マンケル、ヘニング 背後の足音 
ラファティ、R・A 翼の贈りもの
ルパン、アルセーヌ ウネルヴィル城館の秘密 
ルパン、アルセーヌ アルセーヌ・ルパンの第二の顔 
ルパン、アルセーヌ バルカンの火薬庫
浅倉久志(訳) 今日も上天気 
英国推理作家協会(編) 13の判決
メリル、ジュディス(編) 年刊SF傑作選6
メリル、ジュディス(編) 年刊SF傑作選7

国内小説
有馬頼義 黒いペナント
伊藤計劃 虐殺器官
北方謙三 楊令伝 1
北方謙三 楊令伝 2
北方謙三 楊令伝 3
北方謙三 楊令伝 4 
北方謙三 楊令伝 5
北方謙三 楊令伝 6 
北方謙三 楊令伝 7
木村二郎 ヴェニスを見て死ね 
木村二郎 予期せぬ来訪者
堂場瞬一 ミスジャッジ 
三浦しをん まほろ駅前多田便利軒 
矢作俊彦 引擎 ENGINE 
矢作俊彦+司城志朗 ARAKURE あらくれ 

海外小説以外
アクゼル、アミール・D 「無限」に魅入られた天才数学者たち
アーリック、ロバート 怪しい科学の見抜き方
タイソン、ニール・ドグラース かくして冥王星は降格された
リンドリー、デヴィッド 量子力学の奇妙なところが思ったほど奇妙でないわけ

国内小説以外
石川雅規 頭で投げる。
上野健爾、志賀浩二、砂田利一(編) 現代数学の土壌 (読み切れず)
小幡貴一・小幡友貴(編) 不死蝶 岸田森
片岡宏雄 プロ野球スカウトの眼はすべて「節穴」である
工藤健策 プロ野球誤審の真相
後藤紀夫 バンクーバー朝日物語 
志賀浩二 無限の中の数学 
篠宮愼一 誰も知らないプロ野球「審判」というお仕事 
白戸圭一 日本人のためのアフリカ入門 
関根潤三 野球ができてありがとう
森田邦久 量子力学の哲学 
文藝別冊 吾妻ひでお

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感想「予期せぬ来訪者」

「予期せぬ来訪者」 木村二郎 創元推理文庫
「ヴェニスを見て死ね」の続篇の短篇集。こっちは全部初読かな? なんとなく覚えがなくもない短篇もあるが。
こちらの方が「ヴェニスを見て死ね」よりもプロットは込み入ってる感じ。経験値を上げた効果かな。でも、基本的には2冊まとめて一定の期間に集中して書かれた短篇の集成ではあるので、作風自体は大きな変化はないと思う。今読むと懐かしい感じのする、80年代っぽいソフトな私立探偵小説。
もうちょっと主人公のキャラが立っててもいい、という気はする。木村二郎が紹介してくれていたネオハードボイルドの探偵たちは、差別化のための表面的とも思える特徴付けを、古手の評論家にしばしばクサされていたけれど、あの辺の小説は、そういう要素がないと、こんな感じになるのかも知れない、という気がした。
(2011.12.28)

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感想「ヴェニスを見て死ね」

「ヴェニスを見て死ね」 木村二郎 創元推理文庫
ジョー・ヴェニスもの短篇集。読んだ覚えのある作品がかなり多い(全部?)。元になっている94年に出た単行本は買ってないはずなんで、「ミステリマガジン」に掲載された時に読んだ記憶だろう。当時はまだ買っていたはずだから。そっちで読んでるから、と思って、単行本を買わなかったような記憶もうっすら。
木村二郎はファンだけど、翻訳の文章は硬いなとずっと思っていて、この文章で小説かあ、ということを当時思っていた。今読むと、硬さはあるが、昔思っていたほど不自然ではないかな。手を入れているのかな。
プロット的には、先が読める話が多い。読んだことがあるから当たり前という以前に、初読の時もそう思った覚えがある。適当な所から結末を引っ張り出さずに、ちゃんと書いている、ということではあるけどね。
こういうタッチの私立探偵小説は、懐かしい感じがする。
(2011.12.26)

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感想「楊令伝」7

「楊令伝」7 北方謙三 集英社文庫
梁山泊と宋の本格的なぶつかり合いが始まった巻で、割とあっさり入ったなという感じ。もう少し、前の巻までの展開を引きずったりするのかと思っていた。
何人かの登場人物がこの戦いはそんなに長くは続かないと言ってる割に、作家はむしろ先を急いでいるような印象もある。韓伯竜と韓世忠の関係なんか、あっさり流してるし(この後、また生きてくるんだろうが)、早くも双方で大物が戦死しているし。
まだ残りの巻数は結構あるんだが、梁山泊と宋が激突して、梁山泊が負けて終わりという、あっさりした終わり方じゃなく、その後も引っ張る展開があるのかな。まあ、そうなるための布石は確かに、あちこちに置かれているわけだが。この戦いだけで終わってしまったら、李富の出番なんかないままで終わってしまいそうだ。
にしても、これから次々戦死者が出て、しんどい話になっていくわけだな。
(2011.12.23)

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感想「氷」

「氷」 アンナ・カヴァン サンリオSF文庫
ずっと昔に古本で入手したもの。安かったのと(定価以下)、異色作という噂を聞いていて、買ったんだと思うが、ずっと放置していた。最近?ハードカバーで再刊されていることでもあるので読んでみた。氷河期がやってきて、世界が氷で覆われていく中で、主人公が「少女」を追いかけていく話。

よく分からなかった(^^;)。前半は、複数の展開が並行して語られて、説明抜きに全く別の展開に話が飛んで行ったりする、実験的というか、分裂症っぽさが結構面白かったりしたが、後半はそういう部分がなくなって、(かなりわけわからないにしても)直線的なストーリーになっていたし、大地を呑み込む氷河とか、幻想的な「少女」とか、シュールでビジュアル的な鮮やかさも、繰り返されるうちに飽きてきたし。
割と短い小説だけど、この半分の長さでもいい気がする。それで十分、やりたいことはやれたんじゃないだろうか。何がやりたかったのか、はっきり分かってるとは言い難いけども。
ただ、滅んでいく世界や「少女」に、作家が自分の命とかを象徴させていたんだとすれば、そんなに短い話で終わらせるわけにはいかなかっただろうな、という気はする(この小説が出た1年後に亡くなったらしい)。
(2011.12.23)

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感想「Zの悲劇」

「Zの悲劇」 エラリー・クイーン 角川文庫
実を言えば、エラリー・クイーンの全長篇の中で、個人的に一番どうでもいいのが多分これ。さすがに嫌い、と言うのは言い過ぎだが、まあ、どうでもいい感じ。
理由はかなりはっきりしてる。元々レーンものに、あんまり愛着がないというのに加えて、本書はペーシェンスの一人称があまりにも出来が悪く思えた。まあ、ペーシェンス自体が、どうよ、と思うキャラなんだけど。
ただ、ペーシェンスの一人称がヒドいのは、翻訳が古いせいかも、と考えてはいたので(ちなみに創元の鮎川信夫訳)、バリバリの新訳なら、実は面白く読めたりするかも、と思って、角川文庫の越前敏弥訳を読んでみることにした。

ペーシェンスについての結論は、やっぱり翻訳じゃなかった、というものだった。原文で読んでるネヴィンズ(当たり前だ(^^;))がクサしてた記憶があるので、そうかもなあと思わないわけでもなかったんだが。原文の悪さを翻訳がカバーする場合もあるが、本書に関してはそれもダメだった。この時期のクイーンには、リアリティのある女性の一人称を操るのは荷が重かったんだろうと思う。
もっとも、この時期以降、どうだったかは、作例がないので不明だな。ちなみに一人称小説自体、他にないんじゃないかな。そう考えると、「この時期」という言い方は妥当ではないかもしれない。

とはいえ、今回読み直して、それ以外で興味を感じた所はあった。消去法での犯人指摘に持ち込むための条件作りの、さりげない仕込みは大したもので、よく計算されている。クイーンの小説を、謎の構築のされ方を考えて読むようになってから、「Zの悲劇」を読み返したのは初めてと思うが、クイーンらしい丹念な作りだ。ベストな作品に比べると、やや安直な所はあるにしても、そういう観点からは、これは悪い出来の小説じゃないと思う。
その割にプロットでガチガチという印象がそんなに強くないのは、プロット的にほとんど何の役にも立ってないジェレミーが居るからじゃないかという気がする。ジェレミーが何のために居るのかと言えば、女性探偵ペーシェンスを引き立て役のわけで、それはプロットというより、ストーリーだね。ペーシェンスの存在自体、小説の中のプロットの比重を下げて、ストーリー的な要素の比率を上げるためのものに思える。まあ、改めて考えるまでもなく、一見してそうだけど。
その試みは、あんまり成功したとは言い難いけれども、とにかくクイーンはそっちの方へ路線を変えて、戻ってくることはなかった。本書の登場人物が、むやみに大袈裟な人たちに思えるのは、慣れないストーリー志向な小説の中で、生身っぽい人物を描こうとして、素人の俳優みたいなオーバーアクトにしてしまった、ということなのかもな。

「X」「Y」からのレーンの変貌が、すごく唐突だと、ずっと思っていたが、クイーンのそういう路線変更に、レーンのような芝居がかった人物は、メインキャラとしては馴染まなそうで、レーンの変貌は、本書と「最後の事件」で、花を持たせつつ、丁重にレーンにお引き取り願うためのものだったのかもしれない。

法月の解説は面白かった。レーンが実は悪さしてるんじゃないか、という深読みは、結構当たっているかもしれない。
(2011.12.15)

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感想「ミスジャッジ」

「ミスジャッジ」 堂場瞬一 実業之日本社文庫
大リーグを舞台にした小説で、主人公は大リーグ移籍した日本人の投手。そこに、大リーグ昇格を果たした、彼と因縁のある日本人の審判が絡んで、「ミスジャッジ」が起きる。
主人公も審判も、かなりイヤな奴なので、地の部分はあんまり面白くなかった。誰がどうなっても、どうでもええわ、という感じで。
でも、野球に関する部分は、よく書き込まれている。所詮、日本人が書いた大リーグだから、どこまでリアリティがあるんだか、という気はしたけれど、それらしさは感じられるし、小説なんだから、それで十分かな。球場の描き方や試合の組み立て、そういう部分の細かい描写は納得のいくものだった。「野球」を描いた小説としては、悪くない出来だと思う。

ところで、殺人が7年で時効という話が出てくるが、このケースは犯人が国外に出てるから、時効は停止なんじゃないんだろうか。ミステリじゃないし、ストーリー上、そんなに意味がある要素でもないから、いいけどね。
(2011.12.6)

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感想「楊令伝」6

「楊令伝」6 北方謙三 集英社文庫
聞煥章と扈三娘の件はある程度は予想してた展開で始まったけど、こういう凄いオチになるとは思わなかった(^^;)。「水滸伝」の真ん中あたりから持ち越しになっていたネタで、随分引っ張った割には、あっさり終わらせたな、という気もしないではないが、多分、北方は扈三娘を書くのが苦手なんだろう。そんな気がする。まあ、ブンちゃんらしい決着のようには思えるけども。
楊令は、こんな風になっちゃって、大丈夫なのかな。孤高でいることが存在感の一部だったように感じていたんで、この先、随分気安くなった楊令を、どういう風に描いていくんだろうと思う。

それにしても、解説で吉田戦車が書いている、「ジャイアントロボTheAnimation」は、ゲテモノぽくて面白そうだ(^^;)
(2011.11.30)

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感想「まほろ駅前多田便利軒」

「まほろ駅前多田便利軒」 三浦しをん 文春文庫
「MELODY」の漫画版を読んでるうちに興味が出て来て、オリジナルを読んでみる気を起こしたもの。ただ、漫画連載の区切りが付くまでと思って、途中まで読んで放ってあったが、「MELODY」では、ここんとこずっと休載してやがるもんで、業を煮やして読んでしまった。

漫画版から入ったことが、小説の印象にかなり影響しているのは間違いなくて、多田も行天も、漫画の顔以外、脳裏に浮かばない(^^;)。
そういうキャラ的な所以外も、間合いの取り方を漫画っぽく感じたりとか、作家の持ち味なのか、漫画の意識で自分が読んでるから、そう思えるだけなのか、よくわからなくなってる部分がある。
ただ、露骨でない、サラッとした書き方をしつつ、雰囲気から奥に潜む大きなものを感じさせるのが巧い、とは思った。そこは間違いなく作家の力だろう。少し外れた人物像(特に行天やルルはいいキャラだ)とか、タイミングや焦点のずれた会話のおかしさも、作家のものだな。
割と好きな作風かなと思うけれども、解説を見ると、結構色んな方向性で物を書いてる人ぽいので(特に読んでないので、あんまり意識してはいなかったが、そういうイメージは元々あった)、そう言い切ってしまっていいのかどうかはよく分からない。

それにしても「16号は六本木につながっている」というくだりが、かなりひっかかるんだが、直木賞を取った本の文庫版で、(まほろ=町田とすれば)ここまではっきりした間違いが放置されているとは考えにくい。ということは、ここは、まほろ≠町田という、作家のメッセージ? そういうややこしいことを考える人だとすると、やっぱり一筋縄では行かない作家かもしれないな。
(2011.11.26)

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感想「アルセーヌ・ルパンの第二の顔」

「アルセーヌ・ルパンの第二の顔」 アルセーヌ・ルパン 新潮文庫
ボワロー=ナルスジャックの贋作ルパンの3冊目。
「奇岩城」の続編という趣向。「奇岩城」は読んでるが、例によって、中身はほとんど覚えてない。そんなに、強い印象も残ってないんだが、読み直してみるかなと思うくらい、この本は面白かった(^^;)。これと同じくらい楽しめるなら、その値打ちはある。
以前読んだ時に「奇岩城」を楽しめなかったのは、こういう時代がかった、おおらかな冒険小説に対する自分の許容度が低かったからなのか(以前は、そもそもフランスのミステリにあんまり好感を持てなかったが、今は好んで読んでるくらいなので)、今読んでも、原典はやっぱりイマイチつまらないのか(贋作はやはり現代の作家が書いた分、馴染みやすいのか)、その辺を、はっきりさせたい気がする。
しかし「現代の作家」と言っても、実はもう40年くらい前(1975年)に出た本なんだよなあ。高校の頃に戦前(戦中かな)の小説を読んだのと同じような間隔。この本に限った話じゃないが、そういうことを考えると、結構愕然とする(^^;)。
(2011.11.24)

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