「ゴールデン・スパイダー」
ネロ・ウルフものの小説「黄金の蜘蛛」のTV映画化。「グルメ探偵 ネロ・ウルフ」 のパイロット版的な作品。
ずいぶん前にCATVで放送されるのを見つけて、録画したけれど、見ないまま放置していた。この春、死蔵ビデオを整理する一環で、ようやくざっと見てみたら、けっこう面白かった。
その影響で、原作を久々に読み直して、原作との違いの確認も含めて、改めてちゃんと見てみることにした。
元々、「グルメ探偵 ネロ・ウルフ」のTVシリーズはかなり見ていた。そちらと基本的な作りは同じで、出演者たちが原作の人物の雰囲気をよく再現していて、楽しいドラマだった。特にティモシー・ハットンが演じているアーチー・グッドウィンがいい。
1950年代のニューヨークを感じられるところもいい。もちろん、こちらは全然知らない世界だから、現実にどうだったというあたりは、まったくわからないのだけど、小説の内容から想像するしかない当時の風景や風俗を、リアルに見ることが出来るのがありがたい。まあ、現実は、ここまできれいではなかったんじゃないか、と思うが、そもそもがお伽話的な持ち味の原作を考えれば、気にはならない。
原作との違いという点については、想像以上に原作通りの内容だった。きっちり盛り込もうとするあまり、アーチーのナレーションに依存する状況説明が結構多くて、映像化としては、ちょっとどうかな、という面はないでもない。原作自体が、アーチーの語りだから、忠実に映像化すれば、自然にそうなってしまいかねない、というところもある。「グルメ探偵 ネロ・ウルフ」の時は、どうだったかな。
ただ、原作自体がけっこうよく出来ているので(ということを先日の再読で認識した)、それでも十分面白く見れる話にはなっていた。
原作に比べると、フレッドがコミックリリーフ的な役割を、若干、強調されているように思う。それと、ピートの母親が結末部分にも出てくるのだけれど、この部分は原作には(少なくとも邦訳本には)ない。映像化にあたって、メロドラマ的な要素を強調しようとした、制作側の改変だったようには思える。プロットには関係しない付け足しだし、これはこれで、いかにもウルフものの小説にありそうな締め方でもあるので、違和感はない(実際、これに似た終り方をした作品があったような気もするが、勘違いかもしれない)。ただ、もしかしたら、邦訳がつまんでしまっている可能性もあるのかな。邦訳された時期が1950年代なので、ありえない話ではなさそう。原作のオリジナルの英語版を持っていないので、確認できないが。
それから、新聞名の「ガゼット」が「ミラー」になっているのは、どういう理由なんだろうか。何か、「ガゼット」を使えない理由があるのか。
(2020.7.29)
最近のコメント